読書感想:滅竜少女は想いを焚べる 1.枯羽の天使

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は「ぼくらの」というアニメをご存じであろうか。とてつもなく簡単に説明すると、十四人の子供たちが、一度操縦したら確実に死ぬロボットを操り、侵略者を倒す「ゲーム」に挑んでいく、というお話なのだが。乗ったら命の危機がある機体、というのは様々なロボットアニメで存在するであろう。例えばガンダム・キャリバーンやファフナー各機がそれに該当するのであろうか。

 

 

そんな機体を操った者達は後日談で、何らかの後遺症を抱えている事はままあるものだ。この作品においても、主人公である山田(表紙)はそういった事情を抱えているのである。

 

人類を襲い喰らう「竜」という怪物が出現し。パイロットの強い意志をエネルギーに変え動く「PF」と呼ばれる兵器で人類は対抗するも、二十年前に本土を追われ離島へと追いやられて。その二十年前の最前線、「枯羽」と呼ばれた最強の欠陥兵器を駆り人類の脱出を成し遂げた山田。そして約二十年後。枯羽を操縦する為に体のあちこちに埋め込んだ機械が寿命を迎え、メンテナンス用ナノマシンの注射で一年は生きれるがそれ以上は無理と宣言され。何かを成し遂げたい、と決意した彼女は新設される部隊に配属され復帰する事に。

 

「ただ、とても有用な人員であるとだけ言っておく」

 

が、しかし。ジェネレーションギャップは山田を襲っていた。現役時とはそもそも違う操縦システム、運用方法も全然違う。そして同じ隊に配属された少女たちからは奇異の目で見つめられることに。

 

同じ隊になった四人の仲間。真面目な堅物、ミサキ。元気で単純なオウカ。竜への強い復讐心を抱えるマシロ。脱力系だけどやる事はそつなくこなすレイネ。彼女たちに与えられたのは専用機、しかし山田は機体が間に合わず量産機。

 

「相談しろって言ってんの」

 

「アホか貴様!?」

 

「寝言は寝て言おうぜ」

 

しかし、山田は気にしなかった。足りぬならば追いつけばいい、と訓練に励み。戦場でも日常でも変わらぬ態度で隊員に接していく。竜への憎しみから突撃してしまうマシロを認め、新たな戦術を考案し。下らぬ理由で戦っているのでは、というレイネを認めて。自分は隊長にはふさわしくないというミサキには、己の弱みを見せてしまった事で心配されて。

 

「こちらから攻め込みます」

 

日々が深まる中、段々と艦の、チームの中心となっていく山田。それは何か心配する様子を見せていたら、少女たちから構ってくるほどに。

 

だが、刻一刻と余命が迫る中、過去からの敵が蘇る。始まる本土奪還作戦、そこに現れたのは、かつて山田が倒したはずの超強力個体、竜王

 

「どうせ死ぬなら一つ、成し遂げてみたいんです」

 

かつてのような変態的機動力は持たぬも、水平線の向こうからの狙撃能力を獲得した竜王。既に資源は余剰はなく、作戦中止は出来ぬ。だから山田は決意した。かつての人形のように誰かに命令されたわけではなく己の意思で。かつての愛機、枯羽を持ちだす事を。

 

「私の意志で、ここにいる」

 

稼働時間は五分のみ、乗ったら絶対死ぬ。だとしても、自分の意志でここにいるのだから。ただ一人最前線へと吶喊、竜王との決着を彼女はつけて。

 

「さよならなんて、許しませんよ」

 

その代償として、彼女の命は燃え尽きる、寸前に何とか繋ぎ止められて。残された四人は決意する。彼女を目覚めさせるために戦い抜くことを。

 

かつての英雄、大人にも子供にもなれぬ者が飄々とひたむきに道を切り開き。彼女に心奪われた少女たちが、取り戻すために戦いへ。百合でロボットな熱さ迸るこの作品。心打つ物語が見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

滅竜少女は想いを焚べる 1.枯羽の天使 (オーバーラップ文庫) | なんみん, イセ川ヤスタカ |本 | 通販 | Amazon