
さて、時に画面の前の読者の皆様はメスガキ、という存在をご存じであろうか。二次元の世界では時に見かけたりするが、現実の世界では見かけたことがない、かもしれないそんな存在。大体の場合、揶揄われて弄ばれるか抱き潰されるなどされて分からされている印象があるのだがそれはさておき。正直、そういう子は苦手、嫌いと言う方もおられるかもしれない。だからなのかもかは知らないが、ラノベヒロインとしてメスガキという存在を見たことはない、かもしれない。
あくまで私は見たことがないだけで、画面の前の読者の皆様の中には見たことがあるという方もおられるかもしれないが。と言う訳でこの作品の感想なのだが。この表紙を見られたのならば何となくお察しではないだろうか。そう、ヒロインはメスガキである。それも一人ではなく全員がメスガキ、という世にも珍しいラノベなのだ。
惚れっぽくて何度恋をしたか分からない、以外はちょっとおバカだけどごく普通な少年、八尋。失恋を繰り返し、高校入学を機にすぐには落とされない、強い心を持とうと決意して。
「八尋の、アホ面。味わい深いアホ面」
「やったねやひろん! 可愛がってもらえるね」
そして現在、高校二年生。何とか惚れっぽい一面は耐える事が出来ていた。が、しかし。何故か今、彼の周りにはメスガキだらけ。入試の時に知り合い友人になった小羽(表紙)には言葉で弄られ。かつて告白するもフラれた幼馴染、葉月には足で弄られ。理性をゴリゴリと弄られながら、それでも引き離すことはせず。 時に勝負を挑んだりして返り討ちにあいながらも、日々を過ごしていたのである。
「じゃあ、もっとわからせる。八尋が、誰のものか」
ここまでであれば、ただメスガキに弄られるだけ、嫌気を催したり苛立ちを覚える読者様もおられるかもしれない。だがここからが本番。八尋にだけメスガキ、しかし他の人にはダウナーな一匹狼な小羽と仲良くなりたいと願う、クラスの優等生でもある天菜。八尋にとっても気になる相手であり、窓口として頼られ接近する姿に、どこか不機嫌となって。そう、メスガキでいられるのは八尋だけ。安心できるからこそメスガキをやれている、根っこは引っ込み思案で独占欲強めな女の子なのだ。
そんな小羽は、八尋を通じて天菜と友達になり。だがそこで、天菜が優等生と言う外面の裏に隠していたメスガキの顔を解放、八尋を独占しようと目論んで引き離そうとして。
「八尋は、私の一番。私も八尋の一番、じゃないとやだ」
そこへ乱入してきた小羽の助けも借り、天菜をお仕置きして分からせて。その後に明かされるのは、小羽がメスガキになった理由。先天的、ではなく後天的にメスガキになったのには理由がある、それは何故か。八尋の為。 可愛らしい独占欲と、真っ直ぐな思いを垣間見せて。またメスガキに絡まれる日々が始まるのだ。
メスガキの魅力、癖をこれでもかと詰め込んだ、胃もたれしそうな濃度の中にきちんとラブコメの甘さもあるこの作品。癖の強めなラブコメを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。