読書感想:サイバーパンク居酒屋『郷』 ~チート持ちで転生したけどやることないのでまったり過ごしたい~

 

 さて、時に居酒屋というお店がある。画面の前の読者の皆様の中にも行った事のある、という方も多分多くおられるであろう。多人数で行って楽しく飲んだり、一人で片隅の席で好きなペースで飲んだり、と様々な楽しみ方がそこにはあるであろう。そんなお店は、例えばファンタジー系の世界においては酒場、という形で存在していたりもする。

 

 

ではこの作品における舞台、居酒屋「郷」は何処に存在しているのか、というと。2240年のサイバーパンク異世界、現代の地球とは地形や歴史が少し違う、いわば並行世界な地球にあるのである。

 

国家権力がとうの昔に衰退、国は企業のいいなりで、医療と言う名の身体改造が横行し、倫理と良識が終わり散らかしたサイバーパンクな世界。日本のとある都市に存在する、警察の権力が弱く犯罪が横行する暗黒街。この片隅にある居酒屋、「郷」。ここの店主が主人公である通称「マスター」(表紙左)。二十一世紀の地球で事故死し、転生してみれば企業のとある計画の成功例として生まれた彼。

 

「面倒ごとに首を突っ込む気はないさ、金にも困ってないしな。俺は居酒屋をまったり経営するだけで十分だ」

 

そこらの改造人間よりも強靭、不死身性の高い体と高い戦闘力を持ちながらものんびりと暮らしたい彼。だが、二十三世紀の人間と彼の味覚の好みは違い過ぎて中々客は集まらず閑古鳥。更にはこの店に集まる常連客は、変態及び変人だらけなのだった。

 

ヤクザの跡取り娘でドSに過ぎるアヤメ(表紙手前)、その護衛で基本全裸のドエムアサルト(アヤメの上)、サイボーグの何でも屋、ランバー(表紙最奥手前)、その弟子となった改造人間、チューザ(表紙最奥)。

 

「んなわけあるかメーカーに謝ってこい!」

 

「・・・・・・やっぱ前言撤回」

 

そんな奴等と繰り広げるのは賑やかな日々。アヤメと昼寝したり、特殊に過ぎる競馬を見に行ったり。そんな中で、不意に自分に迫りだした陰謀を追う中、自分の店を繁盛させるためにメス堕ち議員を雇い入れたり。

 

「いやいや、どちらかというと現実の方がファンタジーなんだよな」

 

その最中、いよいよ来るのはマスターを狙う思惑、それは過去の計画の残滓。しかし、黒幕は知らなかった。マスターは本当の意味で弱点などない生命体であると言う事を。彼の逆鱗に、既に触れているどころか踏み抜いているという事を。矜持として不殺、しかしきっちりお灸をすえるという意味でぶっ飛ばし。その先に生まれた結果に少し頭を抱えたりしながらも、また日常に戻っていくのである。

 

最強な主人公のSFスローライフ、そんなのんびりとした面白さがあるこの作品。ある意味心穏やかになれる作品を見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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