
さて、時に画面の前の読者の皆様。もし皆様の生まれてから死ぬまでの道のりが「運命」という形で纏められていて、もしそれを書き換える事ができるチャンスがあるとしたら。皆様は手を伸ばされるだろうか。あそこでああすればよかった、こういう道に進みたかった。そういう未練を晴らせるチャンスがあるとしたら。何を賭けてでも、挑みたくなったりするだろうか。
この作品で行われる、生中継で配信される劇場型リアリティショー、「運命のゲーム」。それは本当に摩訶不思議なもの。GMの提案する遊戯に挑み勝利すれば、GMが持つ「台本」で己の運命を書き換えられる。それは文字通り自由自在に。どんなミラクルも起き放題。誰にも知覚されぬ内に、文字通り世界を己の思うがままに。だけど負けたら、何が起きるか分からない。運命は知らぬ方向へなだれ込む。
「今後、ショーの内容や演出は君に一任する」
そんな遊戯を、ランドセルを背負った謎の少女、「オーナー」から託されたのはGMのバイトをする七笑(表紙右)。投げ銭で稼ぐ毎月のノルマを守れば何をしても良い、人員増加も一人だけなら良い、という正に七笑の思い通りの条件。 いつか自分で舞台を作る、そこに立ってもらう主演女優を探すという目的を持つ彼女はうさん臭さを感じつつ、結局は承諾し。同級生のまりあ(表紙右)をアシスタントとして巻き込み、早速GMを開始する。
七笑とまりあが共に出会っていくのは、数々のプレイヤーたち。それは絶対に書き換えたい、己の運命に思う所がある少女達。 お嬢様学校の暗部で賭けの胴元をやっていた子がいて、絶対に勝ちたい相手がいるから、と才能を望む女流棋士がいて。今の恋を、運命にしたいという恋に恋するからこそ何度もこのゲームに挑んでいる少女がいて。
そんな願いたちを遊戯で受け止め、その運命を勝敗の結果を持って改変する中。まりあは言う、自分を七笑の作る舞台に出してほしい、と。だけど七笑ははぐらかす。それは何故か。その理由は、彼女が見てしまった、変えられぬ運命の部分にまりあは初の舞台に立ったら死ぬ、と書かれていたから。 だがノルマ未達になりそうだ、とやってきたオーナーの手により、まりあはゲームの舞台に上げられる事に。
「あれは私の使う女だ。二度と勝手に手を出すな」
オーナーと共に見守る舞台、当然まりあはこの後の運命は知らぬ・・・・・・。
・・・・・・と、思いきや。七笑は狂暴に笑い、オーナーに怒りを叩きつけ。オーナーさえも予想できぬ驚きの展開、まりあを救う為に七笑が万も試作していたゲーム、作りかけという未完成を活かした掟破りが炸裂する。
誰かの願いと欲望巡る舞台の上、七笑とまりあの唯一無二の絆が光るこの作品。色々な意味で心震えるかもしれぬ作品を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: ゲームマスター獄木七笑に試される ~きみの人生逆転ショー、配信で見せつけちゃお?~ (MF文庫J) : 広沢サカキ, nezi: 本