読書感想:死亡遊戯で飯を食う。

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は、「デスゲーム」と聞いて何を連想されるであろうか。生き残れば大金という名誉、しかしそこに至るまでには死の危険だらけ。文字通り己の命を懸けて行うゲーム、という連想をされる読者様が多いであろう。そんな世界で生きていくのならば、ある種の覚悟は必要であろう。一種の麻薬のようなものかもしれない。この作品はそういう作品であり、デスゲームという麻薬に全身浸かった少女のお話なのである。

 

 

目を覚ますと見知らぬ洋館、服装はいつの間にかメイド服。食堂に行ってみれば同じようにメイド服を着せられた五人の少女達。それぞれがゲームに己の目的を以て参加しながらも、やはり恐怖は避けきれず不安に震える。

 

「私は、初めてじゃないから」

 

 ―――だがその中に、落ち着き払っている少女が一人。皆をできるだけサポートすると嘯く彼女、その名はプレイヤーネーム「幽鬼」。気だるげな雰囲気を持つ彼女は、通算二十八回ものゲームを生き抜いてきた猛者。

 

「向いてると思ったから」

 

では彼女は何故、そこまでデスゲームの中に身を投じているのか。その答えは、単純明快。ただ何となく、向いていると思ったから。切実な理由がある訳でもなく、何となく気だるげなそんな理由だけで。強いて言うのなら九十九連勝という頂を目指して。彼女は命が余りにも軽いこの世界で生き抜いているのだ。

 

ただそれだけ、別に理由があるわけでもない。栄誉を求めている訳でもない。ただ何となく、それだけで。ただそれだけで良かったんですとでも言うかのように。「防腐処理」という特別な処置をいつの間にか施され、人の領域から逸脱しながらも。

 

五人の少女達と挑む、「ゴーストハウス」と名付けられた脱出ゲーム。参加者たちを導き、共に課題をクリアして脱出までに近づきながら。必要ともなれば、背負った仲間すらもあっさりと手にかけて。

 

何故彼女はそんな風に、何も考えず手段としてそんな事が出来るのか。その答えは過去、九回目のゲームの中。「キャンドルウッズ」と名付けられた、三百人の「兎」と三十人の「切り株」からなる生死を賭けた鬼ごっこの最中。うさぎに紛れ込んだ殺人鬼が牙を剥き、うさぎも切り株も纏めて、快楽のために殺人の渦を巻き起こした最中で。

 

「私はあの人の弟子だ!」

 

九十六回も生き抜きながら、殺人鬼に殺された師匠の遺志を継ぐと言う言霊を放ち。それが彼女に目的を与える。

 

しかしそれは、ただの辻褄合わせに過ぎないのかもしれない。だが、まごう事無き自分の意思で選んだ生き方である。

 

その芯を通し、デスゲームに挑んで必要ならば誰かを殺す。彼女は既に壊れているのかもしれない。こんな狂った世界でしか生き延びれないのかもしれない。

 

ダーティでカリカチュアライズされたスプラッタが迸り。命なんて安いものだと言わんばかりに簡単に平等に人が死ぬ。そんな予測不能な展開がスピード感と共に駆け抜けるこの作品。

 

まだ誰も読んだことがない作品を読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

死亡遊戯で飯を食う。 (MF文庫J) | 鵜飼 有志, ねこめたる |本 | 通販 | Amazon