
さて、時に画面の前の皆様はこの作品の作者様である春風亭吉好師匠についてご存じでありましょうか? 時にこちらの師匠、オタクな落語家の方でありまして、最近のファンタジア文庫では「転生王女と天才令嬢の魔法革命」や「週に一度クラスメイトを買う話」がお好きとの事。実に良い趣味をされておられる。さてさて、そんな師匠が書かれるのはどんな作品でありましょうか? それこそこの作品、正に師匠にしか書けぬ作品でございます。
時に皆様、落語の舞台を見に行った経験はおありで? 何、行った事がない? それは怒られるべき事ではございません、まずはyoutubeあたりから始めましょう。そんな落語の舞台、最も注目を集めるのは真打と呼ばれる文字通りのプロフェッショナルな方たち。 しかしこちらの作品の主人公、陽太はかの竜王のようなプロの身ではなく、その何歩も手前、前座の身でして。師匠である光月の下で修業するもとあるトラウマによりその力を発揮できず、元天才前座と呼ばれる悲しき身。 その鬱憤はこっそりと、配信で。魔王キャラのVtuberとして晴らしている身でございます。
「言の葉を用いて世界を創る。その究極が落語ですわ」
それではこれより繋がりますは不思議な縁、落語とは言霊を込めた呪文のようなもの、そして陽太が知らずに唱えてしまった召喚魔法で呼び出したのは異世界の魔王様、八代目カオスムーン(表紙)とその母親。聞けば日本の文化は時に次元の裂け目を通じ異世界に流通しており、カオスムーンは魔王ではあるものの魔法の勉強をほぼせず故にほぼ魔法が使えぬとの事。母親より頼まれますは精神修行としての前座修行。カオスムーンは「八子」という名にて、陽太の妹弟子と相成りました。
さてさて、では前座とはどのようなものでしょうか? それは師匠たち、真打の方々のお世話役のようなお仕事もしつつ、真打の前に場を賑わす、休みのなきお仕事。正に目が回るような忙しさの中、八子が目撃するのは陽太がトラウマにて立ち止まっている姿。陽太の幼なじみのみつきより聞きますのは、そのトラウマの理由。 魔王の兄弟子、これで善きか、否善きわけもなし。 真っ直ぐな言葉で発破をかけまして、特訓が始まるのです。
必要なのは荒療治、光月師匠が協力を取り付けますは「阿修羅」の異名を持つ楽三師匠。馴染みの女流前座、きら星の師匠でもある彼の元、八子の危機を落語で乗り越える為に高座へと。そこで掴むは覚醒の兆し、俯瞰するという事にて。 トラウマを一歩乗り越えるも、八子との喧嘩が影を落とし。折しも運悪くその状態で、久しぶりに開かれた前座だけの大会へと挑まんとする事に。
「ヨタの今までの人生を『死神』に込めてごらん」
「我は・・・・・・落語の魔王なり・・・・・・」
さてさて、トラウマを乗り越えることは相成りました。では続きましてのステップは? 守破離、という言葉をご存じで? 八子が魅せた自由な落語、光月師匠より託されましたのは十八番の演目、「死神」。陽太にしか出来ぬ「死神」、その全てをこの高座に込めまして。その結果、魔王、怪物の目覚めと相成りまして。 次の高座への道が開くのでございます。
さて、いかがでございましょう? 厳しさも苦さも熱さもある、落語という世界を描いたこの、落語魔王与太噺。 見たことのない世界のお話を見てみたい、そんなあなたは是非にこの一席、楽しんでいただければ幸いでございます。おあとがよろしいようで。
Amazon.co.jp: 魔王は扇子で蕎麦を食う ~落語魔王与太噺~ (ファンタジア文庫) : 春風亭 吉好, 落語芸術協会, 絵葉 ましろ: 本