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読書感想:他校の氷姫を助けたら、お友達から始める事になりました2 - 読樹庵
さて、高校生ながらに婚約者、という大人の関係まで飛び出していけしてしまった後、その間を埋めるように恋人同士として順調に、恋、どころか愛を育んでいる蒼太と凪の二人だが。氷姫という渾名どこいった?とツッコミたくなるくらいに甘々のとろとろになっていく凪は、前巻で確かに一歩踏み出した。では次は誰か、というと。今度は蒼太の番、である。
彼が親元を離れ一人暮らしをしている理由、それは苦い過去。なればこそ、心の奥に棘の様に刺さったそれ、喉の奥に引っ掛かった魚の小骨のようなそれは、思いっきり引っこ抜いてしまえばいい。という事で、彼が一歩、踏み出す巻なのだ。
「俺も蒼太が育ったとこ、行っても良いか?」
クリスマスも終わり年末年始、その前の終業式。蒼太の親友である瑛二が年末年始お邪魔しても良いか、と言いだして来て。凪が友人である光も誘いたいと言い出し、無論問題ないという事で。先に蒼太と凪が帰郷、その後元日に残る面々が来ることに。
「今日からお義母様とお義父様、とお呼びしたいです」
先に戻った故郷、そこは蒼太にとっては苦い過去が残る場所。蒼太の両親に凪も大歓迎を受け、母親とあっという間に仲良くなり始める中。一人出かけた蒼太が因縁の相手である元級友達に見つかり絡まれ、少し落ち込んでしまう。
「・・・・・・全部、私が幸せな記憶で塗り替えちゃいます」
それを受け止めるのは、恋人であり婚約者である凪の役目。彼女の真っ直ぐな愛に、今まで堪えていたものと自分のふがいなさが溢れるも、立ち直って。
「はい。楽しみます。長い長い道のりを」
だが故郷に残るのは、悪い過去ばかりではない。蒼太の母校や通い慣れた道を二人で、その中で再会するのは蒼太を心配してくれていた人達。彼の事を心配してくれてありがとう、とお礼を言って。また愛を深め、それはどんどんと歯止めが利かなくなっていきそうになっていく。
「逃げも隠れもしないよ。俺が思う、かっこよくて頼れる人になるために」
そんな中、元日。皆で訪れた神社で遭遇したのはかつての級友達。また尻込みしてしまう中、彼の為に怒ってくれる瑛二と凪。その在り方に背を押され、勇気を出して。臆病を超えて一歩、トラウマを乗り越える。凪に相応しい自分である為に。
「この人生を終えたとしても、次の人生を迎えても、蒼太君を愛し続けて傍に居ます」
想い重なり、より深化して。帰ってきて、いつもの日常のその前に。当たり前のように、それが自然であるように。二人でまた一歩関係を深め、次の線を越えていくのである。
より甘く、より蕩けて。しかしまだまだ人生は続く。何なら就職、結婚、子育てまで見てみたい。そう真っ直ぐに思える今巻。シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: 他校の氷姫を助けたら、お友達から始める事になりました3 (電撃文庫) : 皐月 陽龍, みすみ: 本