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読書感想:他校の氷姫を助けたら、お友達から始める事になりました - 読樹庵
さて、昨今のラブコメと言うのは付き合って終わりではない。他の作品でも何度か語った気はするが。付き合いだしたところでその後の人生があり、付き合いだしてからが本番とも言えよう。その点においてこの作品の主人公とヒロイン、蒼太と凪は始まりの段階から婚約者、という色々な段階をすっ飛ばしていってしまっている訳であるのだが。まず初めに通すべき筋もあり、一足飛びをして抜かしてしまったものを埋めなければいけないのだ。
「・・・・・・もう我慢しませんからね。ふふ」
前巻の直後、蒼太との願い叶い婚約者となった凪の中、ストッパーは外れて。更には凪の母親により蒼太の家へのお泊り会が急遽敢行される事に。
「あれ、新婚何年目だと思う?」
既に親友達から新婚か、と揶揄われるような距離感で。更には蒼太の願いで、彼の家の合鍵が凪に託される事となり。彼の家にも彼女の居場所は確かに作られ始めていく。
「・・・・・・こうでもしないと、彼女達は分かりませんから」
付き合い始めて引き出されていくのは、凪の普通の女の子としての顔。ぐいぐい来る一面も出てきて、更には蒼太に女子が接近しているのを見てやきもちを焼いて、彼は自分の婚約者であると周囲の面前で宣言したり。最早氷姫、という異名はどこへやら。周囲に驚きを巻き起こしながら、どんどん関係を認知させていく。
「本当に貴方が幸せに出来ると思っているんですか?」
その胸、蒼太に話せぬままに突き刺さるのは心の棘。彼からは本当にたくさんの物を貰っている、だけど自分は? 自分は彼に何かを返せているの? 自身の幻影に蔑まれ、それでも幸せにすると決意を新たに。
「生涯をかけて、私が必ず蒼太君のことを幸せにします」
蒼太を訪ねて来た彼の両親にも挨拶、きちんと筋を通してお願いし。蒼太の両親にも認められて。幸せ過ぎてちょっとふわふわして成績が下がる、という微笑ましいトラブルもありつつ。巡ってきたのはクリスマス。二人で示し合わせたように出かけることになるのはあの遊園地。辛い思い出が残るあの場所を、楽しい思い出で上書きするために。
「杞憂だったんだって、二人で笑おう」
あの時とは違う、お別れを前提にしないからこその楽しい時間。その中、蒼太が察するのは凪が心に抱えたもの。それは心の負い目、残る傷。例え赦されようとも、拭いきれぬ罪の意識。ならばそこへ何を言えばいい? 答えは一つ、彼女を信じる、共に幸せになりたい者として。 数十年後の未来を前提に、真っ直ぐに伝える気持ち。それは罪の意識と言う氷を溶かし、より甘い思いを深めていくのである。
より甘さ深まり高まっていく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: 他校の氷姫を助けたら、お友達から始める事になりました2 (電撃文庫) : 皐月 陽龍, みすみ: 本