読書感想:アメリカ帰りのウザかわ幼なじみが今日も俺を踊らせてくる1

 

 さて、ついこの間に閉会したパリオリンピックで初めてブレイキンが採用された訳であり、採点問題が一時社会を賑わせて。仮面ライダーでダンスと言えば、かの虚淵氏が脚本を務めた仮面ライダー鎧武であるがその辺りの話は置いておいて。昨今は学校の授業でダンスが取り入れられたりしているらしいが果たして画面の前の読者の皆様は、これまでダンスに親しまれてきたであろうか。

 

 

とそんな前置きはさておき。この作品はダンス、が関わる物語であり。そして重要なテーマは再起。挫折してしまって心折れて立ち止まってしまった者が再び立ち上がり、歩き出していくお話なのだ。

 

「どうたい、これでわかっただろう?」

 

かつてはダンスに熱中し、全国レベルにまで上り詰め。しかしとある事件をきっかけに今はダンスから離れ、無気力な日々を送る少年、流斗。夏休み、彼の前に現れたのはかつて離ればなれになった幼馴染、星蘭(表紙)。アメリカンなノリも加え、かつての距離感でぐいぐい来て。更には彼女が家にホームステイする事になり。更に彼の通う高校に転校してきて、気が付けば賑やかな日々は始まる。

 

「ルーくんのことは、今度は私が助けてあげるから・・・・・・」

 

クラスメイトでありかつてのダンスのパートナー、乃羽がやきもきしたりする中、星蘭は流斗の事を救うと呟き。SNSで大人気のモデルになっていた彼女の仕事を目撃したりする中、流斗は感じる。仕事だから仕方ないとしても、彼女が本気で笑っていないと言う事を。

 

「私を笑顔にするためだけに、一緒に踊ってくれないかい?」

 

そんな中、彼女の舞台に誘われ、即興でダンスを披露し。かつての経験が背を押し、不格好ながら踊れて。決意するのは、彼女との約束を守る事。今はもう遠くなってしまった星にもう一度、とその手を伸ばすと言う事。

 

だけど過去からは逃げられない、逃がしてくれない。 大規模イベントに飛び入り参加、だが観客に己と乃羽の過去、大事な場面で思いっきりミスをしてしまったというトラウマを思い出させられ。またその足は止まろうとしていく。

 

「あそこにいるヒロインは、自分を助けに来てくれる主人公のことを、ずっとずっと待ってるわよ」

 

そんな彼の背を押すのは、かつてのパートナーである乃羽。今向かうべきは自分の元ではないからと背を押し。星蘭が一人で待つ舞台へと、彼を送り出す。

 

そう、過去がなんだ。囚われていては、手すら伸ばせない。手を伸ばした者にこそ、掴めるものがある。今こそ掴み取るべきなのだ、空に手を伸ばした先にあるあの星を。

 

思いは足を突き動かしステップを導き、彼女の為にまた一歩、と。再び踏み出すステップが織りなすダンス、それこそが星蘭の見たかったもの。そのダンスこそが、本当の笑顔を引き出す鍵なのだ。

 

再起の熱さに溢れた真っ直ぐな青春ものであるこの作品。熱い青春を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

アメリカ帰りのウザかわ幼なじみが今日も俺を踊らせてくる 1 (オーバーラップ文庫) | 六海刻羽, こむぴ |本 | 通販 | Amazon