さて、最近のラノベの流行と言えば、悪役転生、というのはあるであろう。例えばゲーム、例えばラノベ。様々な創作の世界の悪役、それも基本的には破滅の運命が約束されているキャラに転生し、その運命を覆すために努力する、というのが大筋なのであるが。そう言った場合、どんな役どころを志すのであろうか。かつては改心して、という展開も多かったが、最近は改心しなかったり言動を改めなかったり、という展開も多いような気もする。さて、という訳でこの作品もタイトルから分かる通りに悪役転生ものな訳だが。この作品において重要な事とは、何であろうか。
それは「正しさ」。己の中の正義、正しさを貫き通すのがこの作品、なのである。
数多のスキルを組み合わせた幾多のビルドがあり、多種多様なビルドによる楽しみ方がある美少女ゲーム、「学園カグラザカ」。このゲームにはどのルートにおいても死亡する悪役貴族がいた。その名も「タイタン」。(表紙中央) 最後は主人公によりやられる彼、に転生したのが本編主人公である。
「生きてやる。世界も、運命も、俺が全て否定してやる」
しかし彼には致命的な欠点があった。それは、この世界では普通に誰しもが持っている「スキル」を使えない、という事。スキルが絶対であるこの世界で、どう見てもそれは致命的。貴族の家に生まれながら、何も期待されず、弟に全てを奪われて。それでも生きていくしかない。 自分に出来るのは努力だけ。積み重ねる努力をこつこつと重ね、まずは父親に最低限の価値を示して見せる為に。ボスモンスターの単独討伐に挑み、死闘の果てにぎりぎりの所で何とか討伐する事に成功する。
「呆れてものも言えん。自身の意見には賛同以外の発言が出ないとでも思ってるのか?」
まずは一つ、ほんの少しでも価値を示し。入学した、舞台となる学園で出会ったのは王女であるシアン(表紙左)。天真爛漫、しかし王族としての威光、カリスマを無自覚に持っているからこそ周りがイエスマンばかりで少し世間知らず。そんな彼女のお花畑的な理想を真っ向から否定して見せた事で、彼女のメイドであるクロノ(表紙右)に睨まれ。一先ず彼女とは冷戦状態、のような状態となる。
分かり合えない平行線、その中でもタイタン、周りから嫌われながらも愚直に努力を続け、生まれ持ったデバフなぞ知った事かとただ自分に出来る事を続ける彼を見て、少しずつ自分が今までどれだけ恵まれていたのか、という事を知り。少しずつ、本当の意味で自分の理想を叶える為に、タイタンとも向き合おうとしていく中。王女の意を勝手に組んだ一部の者達により、タイタンを集団リンチする事態が起きてしまう。
「負けるのが『死ぬほど』嫌いなんでな」
だけどそれでも負けられぬ。幻想世界の中、自分に詰め寄ってくる本来のタイタンに啖呵を切り、実は近くにいたもう一人の転生者をも圧倒し。本当の意味での自分の正しさを見付けたシアンと激突し。世界に対し、筋を通していくのである。
意外と骨太、根っこは王道なこの作品。悪役転生ものに触れてみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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