読書感想:好きな子の親友に密かに迫られている2

 

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読書感想:好きな子の親友に密かに迫られている - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

覆水盆に返らず、という言葉がこの作品には似合う、のかもしれぬ。一度切ってしまった口火は、もう止めることは出来ぬ。一度開いてしまった背徳の扉は、最早閉める事は相ならず、後は深淵に引き込まれるのが早いか、遅いか、それのみと言えるかもしれぬ。ではこの作品にて、晴に誘惑された蓮兎が何処まで耐えられるのか、というと。果たしてどれほどのものなのだろうか。

 

 

その答えは未だ、ココから見ていきたい次第である。しかし先に言ってしまうと、まるで引き留めるのではなく、蹴り落とすようにより混沌へと突き進ませていく、それが今巻なのだ。

 

「今日も・・・・・・解消、できたね」

 

美彩に秘密で積み上げる、今日もまた背徳を。恋人でもない彼女を抱いてしまった、一丁前に抱いている罪悪感に押し潰されそうになりながら。それでもそれを隠す為、今日もまたいつも通りに美彩を口説く。

 

「今、瀬古の前にいるのはあたしだから」

 

自分だけを見て、今だけでいいから。晴の思いに、罪悪感を飲み込んで耽溺する中で。始まっていくのは夏を越えて秋、体育祭に文化祭というイベント満載の季節。晴が体育祭の全競技に出場する事となり。蓮兎は文化祭の準備を手伝おうとするも、晴の意見により体育祭の練習に向かう事に。

 

 

「その欲望は誰しも抱くものだわ。だから、仕方のないことじゃないかしら」

 

その途中、蓮兎と共に出し物の参考にするために美彩は彼と共に出かける事となり。その中で実感するのは、彼もまた自分と同じという事。自分はとっくの昔に、もう戻れぬ程に彼によって変えられていた、という事。

 

その自覚は、彼女の中で変化を招いていく。今までは求めるだけだった、続きを言ってくれなくて不満に思うだけだった。だけどそれだけでは駄目なのだ、と。彼の事を手に入れる、独占するために。少しずつ彼に対して寄りかかっていく、甘えるようになっていく。

 

そうなってくれば気になってくるのは、親友である晴の動き。二人の間に流れる空気がどうも気になって、心がきしむ。 彼の中に芽生え始めている心に、少しずつ勘付いていく。

 

「瀬古くんのしたいこと、私としたいこと。全部、私としましょう?」

 

「晴には内緒で」

 

勘付いた、気付いてしまった。ならばもう戻れぬ。そして彼女も覚醒の時を迎える。全てを自分のものに、それを待つ、搦めとろうとしていく。晴には内緒、更なる背徳の扉を開いていく。

 

より混沌、より背徳に踏み込んでいく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。