読書感想:死亡遊戯で飯を食う。5

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:死亡遊戯で飯を食う。4 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 

 勝利を得る代わりに、生き残れば生き残った分だけ傷ついて。どんどんと抱え込んでいく弱点が、その身を生き残らせるという行動の足を引っ張って。前巻、右目の視力のほぼ全ての喪失という弱点を抱え込んだこの作品の主人公、幽鬼。しかし白士の夢を継ぐ、という目標の為にはまだ生き残らればならぬ。何故なら段々と終わりは見えて来たけれど、まだ残り三分の一くらいはあるから。果たして彼女は無事で済むのか。

 

 

そして忘れてはいけぬ。この死亡遊戯という盤面で生き抜き飯を食っていると言うのなら。。それは望まぬ対決をする、という可能性もある事を。それでも生き延びて勝ち抜くためには踏みつけねばならぬのだ、どんな敵が相手となるにしても。

 

「そうか。なら、私の弟子にしてやろう」

 

「なんか、責任を感じるんですよね」

 

と、まぁその前に。前巻の最後、押しかけて来た押しかけ弟子、玉藻。振り切ろうにもひっ付き虫のように離れてくれぬ彼女を、やむを得ず弟子にする事になって。日常生活で彼女のお世話を受け、白士の助言で自分なりの生き残るための指導をする中。二人で向かうのは孤島で待っている、元プレイヤー。鈴々という名を持つ彼女は、全盲でも生き抜いてきた稀有なプレイヤー。

 

「でも、これが私のやり方だから。従ってもらうわね」

 

しかし、白士から覚悟しろと言われた彼女の指導は生温いものでもなかった。文字通りの実戦形式、技は盗めと言うスパルタにも程がある指導で呼び出された孤島はあっという間に模擬ゲームの場へと代わり。玉藻だけ帰らせる事も許されず、やむを得ず二人で生き延びる為に鈴々と戦う事となる。

 

模擬ゲームの中、鈴々に引っ掛かる小さな違和感から彼女が抱えた秘密を推理し、何とか勝利を引き寄せ。右目が本格的に失明してしまう中、それでも生き延びる為に技術を磨き。その中で玉藻に教えられることはなくなった、と師弟関係を解消する。

 

「―――おかえり」

 

 

 だがしかし、それは間違いである選択肢。六十二回目のゲーム、剣士となって他のプレイヤーとチームを組んで生き残りを賭けて代表者同士がぶつかり合うゲームで。向き合いきれなかった彼女と激突する事となり。自身の過ちを理解しつつ、心を裂かれながらも泥臭くも勝利を掴んで。だけど、身体の傷は治っても、自分で傷つけていた心は波紋を生んで。もう一人の彼女、という像を幽鬼の前に突き付ける結果となる。

 

重ねる度に心も体も傷ついて、それでも裂かれようとも遊戯に生きる今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 死亡遊戯で飯を食う。5 (MF文庫J) : 鵜飼 有志, ねこめたる: 本