読書感想:魔女狩り少女のぼっち卒業計画 孤高の対魔女兵器、女子校に潜入する

 

 さて、平和になった世界においては兵器のような存在は不要であり、過ぎた武力は必要ではなくなって処分される、という事は往々にしてあり、ラノベにおいても時々戦後を描いた作品と言うのは存在している訳であるが。現実世界の兵器、というのは割と簡単に破壊して処分できる存在であるかもしれないが、ラノベにおいてはそんなことはないと言うのは画面の前の読者の皆様もご存じであるかもしれない。特に魔法等が存在する世界であれば。個人が兵器並みにとんでもない力を持つこともあり得るであろう。

 

 

有史以来、長きにわたり魔女との戦争に明け暮れていた人類が、全ての魔女の母体ともいえる存在であり、魔女を生み出す鍵であった「母体魔女」を滅ぼすと言う成果を上げた事で戦争が終わったとある世界で。人工的に魔女の血を体内に宿した超人兵士、「魔女狩り」の一員であったクオ(表紙)。魔女狩りの中でも最凶と呼ばれた彼女に戦後叫ばれたのは、処分しろと言う軍からの声。それを避け、安全性を証明するために彼女は普通の少女として、一般市民階級の女子専用の学び舎へ通う事となる。

 

「実はわたしっ、人づきあいというものが、全然できないんですっっ」

 

 が、しかし。クオには致命的すぎる欠点があった。それは極度の人見知りであると言う事。生来の性格に戦場での経験が合わさったそれは致命的に集団生活には向かず。しかしやるしかない、という事で容赦なく学校へと放り込まれる。

 

「ぼくたち、ともだちだろう?」

 

到着して早々、出会ったのは探し物をしていて周囲から浮いている少女、ルカ。彼女の探し物に付き合う事となる中、いきなり学校がテロリストに占拠されるという事態が発生し。その中で判明するのは、ルカが実は魔女の生き残りであると言う事。同時にクオも魔女狩りであるとバレてしまい、互いに秘密を握り合う、いわば共犯者的な関係となって。

 

そんなクオを見張る為、「魔女狩り」の後輩でもあるノエルまでやってきて。コミュ障なりに周囲と関わり合おうとする中。学校に隠されていた軍の作戦室、そこに隠されていたものと、その下で隠蔽されていた大戦中の負の遺産、更にはルカの探しものが絡み合って。また戦乱を、滅びを望む遺された意志が目を覚ます。

 

「だけどきみはちゃんと無事に帰って来てね」

 

脅威を前に、決意する。たとえこの後処分と言う形で殺されるだけだとしても、それでも今、守りたいものがあるから、と。命令ではなく自身の意思で解放するのは、「魔女狩りの魔女」、と呼ばれた最悪で最強の力。全てを灰に還す、一方的な力である。

 

少女が少女に出会い始まる、ドタバタな中に確かな絆の温かさがあるこの作品。ガールミーツガールで心を熱くしたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 魔女狩り少女のぼっち卒業計画 孤高の対魔女兵器、女子校に潜入する (ファンタジア文庫) : 熊谷 茂太, 瑠奈璃亜: 本