前巻感想はこちら↓
読書感想:私の初恋相手がキスしてた - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれた読者様の中で情緒をぐちゃぐちゃにされた読者様はどれだけおられるだろうか。されたという読者様は、恥ずかしがらず手を上げていただきたい。私もその一人であるので。では、チキさんと呼ばれる女性にどんどん引き込まれつつある海と、彼女を心配し止めようとする空。三人の関係は、果たして何処へ向かうのか。
「海と暮らしてる子がどんな子か知りたいし、女子会しましょう」
前巻の最後から繋がる最初の場面。海がチキさんとキスしているのを見てしまう空、その存在もほどなくして二人に露呈し。だがしかし、チキさんは悪びれもせず笑いながら、笑顔でとんでもなく頭のネジの外れた提案をぶちかます。その提案を思わず空は飲んでしまい。否応なしに女子三人による「ラブホ女子会」が始まるのである。
「わたしたち多分そのうち別れるから、きみも諦めなくていいよ」
「お金に善悪はないよ」
「きみは、本当にいい子だね」
三人でお菓子を囲んだり、共に同じ寝床に潜り込んだり。その中で、チキさんは空と二人きりの時に三つ、彼女に質問をする事を許し。「地平シホ」という本名を明かし、空の事を弄んでいく。謎に包まれた、掴ませぬ態度で。本心を掴ませぬ声音で彼女を掌の上で転がしていくのだ。
それはまるで、気が付けば囚われている蜘蛛の巣のように。最初の時は警戒から始まっていたはずなのに。空もまた、チキさん改めシホから目が離せなくなっていく。海がシホとの別れを拒み、どこか縋りつくような態度の裏で。どこか警戒しながらも、空もまたシホとの時間が増えていく。
時間の非連続性、幾重にも切り取られていく場面の中で。空と海という二人の少女が、シホという一人の女に心惹かれていく。三角関係が新たなる色を加え、さらに複雑に、混沌の中に深まっていく。
「一応、あなたのお姉ちゃんになるのよ」
空との関係深まるシホ、それを見て心穏やかではいられぬ海、彼女の怒りの扉をあっさりと閉じ、カラカラと笑うシホ。まるで地獄に引き込まれその中で苦しめられるかのよう。感情の爆弾爆発する中、更なる衝撃の事実が明らかとなる。彼女達三人の関係に、まだ足りぬと。これでもかと言わんばかりに、更なる関係性が追加され。彼女達の三角関係はより深く、踏み込んでいくのである。
正に感情の地獄、うねり荒れ狂う海のように、雨と言う涙を流す空のように。更に情緒をぐちゃぐちゃにしてくる面白さが更に深まる今巻。
前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。