読書感想:剣帝学院の魔眼賢者

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方にとって賢者と聞くと、どんな作品の登場人物を思い出されるであろうか。賢者と言えば、どんな人間か。高潔な人間であろうか、それとも何処か卑怯な闇に満ちた、卑しい悪役であろうか。

 

物語が始まる千年の前。十年前に起きた、千年に一度の災厄、黒き太陽の魔神により起こされた「陽炎」が世界を焼き尽くし、白き太陽の女神による復興が始まった世界。師匠である賢者、リンネに選ばれた六人目の賢者にして、師を越える最強の賢者であるラグ(表紙左)は唐突に告げられる。魔術の才を持つ者がどんどんと減っている今の時代、君が生まれたのは奇跡であり、千年の先、再び人類がその災厄を乗り切れる可能性は限りなく低い。だからこそ君には、千年後の世界へと行って人類の希望になってもらいたいと。

 

だがしかし、辿り着いた千年後の世界は二つの太陽もなく、街も魔術の痕跡すらも無くなり。「聖霊」と呼ばれる謎の存在の力を用い、剣術で魔王や魔物達と戦う、様変わりした世界であった。

 

そんな世界に戸惑うラグが出会ったのは、聖霊の力を使う事を訳あって封じ、剣術のみで戦おうと努力を続ける少女、クラウ(表紙右)。

 

彼女の窮地を圧倒的な魔術の力で救い、心の有り様の師匠と認定されたラグは彼女と共に、帝都と呼ばれる都にある剣帝を育成する学園へと入学する。

 

そこで出会うのは、クラウの元親友であるリサを始めとする聖霊の力を有する、同じ目標に向かって突き進む、剣帝の卵達。

 

そして、かつて魔王の一体を討伐した、師匠にそっくりな謎の女性、リンネ。

 

彼女との邂逅に心を揺らし、彼女といつか戦わんと願うラグ。

 

だがしかし、ラグは残酷な事実を唐突に知らされる。

 

聖霊の正体、それは滅ぼされた女神と魔神の残滓から生まれた「理」である事。

 

そして、女神と魔神を殺したのは魔王ガンバンテイン。自らに改造を施し、禁忌の果てに魔へと堕ちた愛する師匠であると言う事を。

 

「私を殺してみろ、最後の賢者よ」

 

魔へと堕ちた師匠はラグへと告げる。彼女の願いに応える気概があるのなら、我を殺せ、奪い続ける我を終わらせてみろと。

 

「魔王ガンバンテイン。僕はここで、あなたを終わらせる」

 

その願いにラグは答える時、戦いは始まる。万能同士がぶつかり合うお互いの在り方を押し通す為の戦いが。

 

王道に真っ直ぐ、どこまでも忠実。その中に様々な謎と伏線の散りばめられた、大きな物語である事を伺わせてくるこの作品。流石ツカサ先生としか言えぬ、それほどまでに正面から面白いのは必定の理。

 

王道ど真ん中のファンタジーが好きな読者様、最強の主人公による活躍が拝みたい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

剣帝学院の魔眼賢者 (講談社ラノベ文庫) | ツカサ, きさらぎ ゆり |本 | 通販 | Amazon