読書感想:元スパイ、家政夫に転職する

f:id:yuukimasiro:20201128184758j:plain

 

さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方に取ってスパイと言えば誰だろうか。あらゆる手練手管を用い、様々な手段と顔で潜入を始めとする任務を華麗にスタイリッシュにこなす。そんなスパイ達の活躍に憧れられたことはあるだろうか。

 

秘密組織、フルピース。その諜報部に属するスパイ達の中の精鋭であるスパイ10指。その九番目に序列された凄腕スパイ、クロウ(表紙右)。

 

が、しかし。真面目に働いていたはずの彼は突然、組織から解雇命令を受けてしまう。それは何故か。

 

その理由は、表紙を見てみればわかるかもしれない。そう、彼はイケメンである。これ以上が無い程にイケメンである。

 

そのせいか、組織中の女性が彼に惚れてしまい、本人が気が付かぬ間に組織が崩壊の危機を迎えていたという、言わば逆サークルクラッシャーのような状態を、天然で引き起こしてしまっていたのである。

 

とりあえず転職する事になったクロウは、元上司の口添えもあり再就職を果たす。

 

その再就職先は、訳あり三姉妹が住まうお家の家政夫、言わばハウスキーパーという全くの方向違うである役職であった。

 

しっかり者であり高校で姫と呼ばれる桜(表紙)。大学二年生にして既に飲兵衛な夏海。引っ込み思案な文学少女の秋樹。

 

普通であれば、難しいお年頃の女の子達と同居しながら未経験の仕事をしなければならない、そんな割と絶望的かもしれないこの状況。が、しかし。割と何とかなってしまった。その理由とは何故か。それは、クロウの任務もとい仕事に向かう姿勢と、彼の無自覚イケメンな行いが理由である。

 

家事の地震はないけれど、それでもスパイ時代に培った数々のスキルは彼を裏切らず。

 

ご近所トラブルも、三姉妹のお悩み相談も。その美貌と無自覚イケメンから繰り出される数々のハニトラで瞬く間に攻略し。

 

「―――了解した」

 

そして、街の暗部が産み落とした悪意が桜に迫り、心からの叫びが届く時。

 

「葉咲家の家政夫だ」

 

最強の一角にして、戦闘が誰よりも得意な彼の「お掃除」が始まる。安心できる声と共に、圧倒的なまでに。

 

全体的にヒロインも可愛く、同時にちょっと常識知らずのぽんこつ、だけど誰よりも真面目で真っ直ぐな主人公が可愛くて格好良いこの作品。

 

ブコメのコメの部分が多めに発揮されている中、始まったばかりのラブが確かに甘い作品である。

 

くすりと笑えてヒロインに悶えられるラブコメが好きな読者様、スパイの鮮やかな活躍を楽しみたい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

元スパイ、家政夫に転職する (角川スニーカー文庫) | 秋原 タク, ハリオ |本 | 通販 | Amazon