読書感想:結婚が前提のラブコメ2

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前巻感想はこちらから↓

yuukimasiro.hatenablog.com

 

春雷、それはまるで恋のように落ちるもの。そして、目覚めの時が来たことを告げる、始まりのきっかけとなるものだ。

 

業界内話題騒然、婚活及び結婚相談所とまだ誰も見たことのない舞台で描かれるこの作品。しかし、この作品には足りないものがあった。それは何か?

 

それこそが題名にもありながら、全ての始まりとなった前巻では描き切れなかったもの、即ち「ラブコメ」だ。そして恋も、愛も、物語の始まりを告げる鍵となる一歩なのだ。

 

前巻に引き続き、結婚相談所での面白い婚活や婚活についてのあれこれを描きながら繰り広げられる日常。その中で登場する型破りな坊主や結婚間近の高木さんを始めとした登場人物達。その片隅で描かれる、前巻においての黒峰の想い。

 

そこで描かれるのは、幸せになりたい者達、彼等の人生を主人公として踊る者達の切なる願い。縁太郎と形は少し違えど誰かの幸せを願う仲人としての願い。そして、今巻で描かれる軸は「誰の為に婚活をするのか」という軸である。

 

その軸を担うは、玉の輿で返り咲きを狙う姉御肌なお嬢様、早乙女カレン。元の世界に戻りたいと願いながらも、いつも誰かに主役を譲り、自分は汚れ役となってでも舞台の端で踊る彼女。もっと強欲になればよいのに、自分を甘やかせばよいのに。だけど、それでも。彼女は願う。誰かの幸せを一番に。

 

そんな彼女の婚活の根底にあったのは、あの世界に戻って再会したいと願う「彼女」の為。「自分」の為ではなく「誰か」の為。そして忘れられぬ華美なあの世界の残滓がまるで終わらぬ魔法の迷宮がシンデレラを縛り付け、終わらぬ夢の中で踊らせようとするかのように彼女の心を縛り付ける。

 

だけど。そんなカレンを救ってくれる人がいた。再会したいと願っていた「彼女。そして我らが頼れる主人公、縁太郎である。

 

「私は、嬉しく思います」

 

自らの世界で幸せを掴んでいた「彼女」の言葉が救いとなり縛る鎖に亀裂を走らせ。

 

「最高の笑顔で、バージンロードを歩けるからよ」

 

誰よりもカレンの幸せを願い、過ちを受け止め正す縁太郎が鎖を打ち壊した。

 

「わたくしはちゃんと結婚して、幸せになりますので」

 

そう、この言葉が出せた時に彼女の本当の意味での婚活は始まったのだ。十二時を過ぎて魔法が解けて、ガラスの靴を無くしたシンデレラが、自らの勇気で一歩を踏み出し自分だけのガラスの靴で歩き出せた。かけられた魔法ではなく、十二時過ぎの自分だけの魔法をその手に新たな光へと会いに踏み出せたのだ。

 

「負けませんわよ」

 

本当の意味で、自分の物語という舞台で主役として踊り始めたカレン。彼女が結衣へと告げたのは、縁太郎は譲らないという自分の願い。

 

それに対し、結衣は? まだ名もなき主役にもヒロインにもなりきれぬ未熟なプリンセスはどうするの?

 

画面の前の読者の皆様、刮目してほしい。そして、また彼等に会いに行ってほしい。

 

「結婚が前提のラブコメ」、遂にここからラブコメに火は灯る。そして、ラブコメが動き出し本当の意味でこの作品は始まるのだ。ここからがこの作品の本当の始まりだ、だからこそ見逃さないで。

 

お楽しみは、これからだ。

 

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読書雑記:六月もそろそろ後半戦という事で、明日明後日発売の新刊の中から個人的期待の新作及び続刊についてなお話。

こんばんは。梅雨の季節も本格的に始まり、本が濡れるのが心配な季節になってきた中、急に愛用のヘッドホンの右側だけ聞こえなくなったというトラブルに見舞われている真白優樹です。変な感じの予兆はなかったはずなのですが・・・。ではヘッドホンは修理に持っていくとして、気を切り替えて明日明後日発売のガガガ文庫及び富士見ファンタジア文庫の新刊の中から、幾つか作品をピックアップしていきたいと思います。

 

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結婚が前提のラブコメ
著:栗ノ原草介先生
絵:吉田ばな先生

 

ではまずはこちらの作品。このブログでも記事にしました作品の続刊となります。今巻は表紙にもある通りカレン嬢が中心のお話であり、栗ノ原先生曰くお楽しみはここからという事で、どんな展開を見せていくか楽しみです。

 

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サンタクロースを殺した。そして、キスをした。
[第14回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>]
著:犬君雀先生
絵:つくぐ先生

 

続きましてはこちらの作品、第十四回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞の作品となります。twitterの宣伝によりますと、かなりキツめな青春のお話らしいので、どんな青春が見れるのか楽しみです。

 

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シュレディンガーの猫探し
[第14回小学館ライトノベル大賞<審査員特別賞>]
著:小林一星先生
絵:左先生

 

では続きましてはこちらの作品。かのガガガ文庫編集長が直々に編集を名乗り出た、自由さ溢れる作品との事で、一体どんな自由な作品となるのか、楽しみです。

 

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姉をさがすなら姉のなか 年上お姉さん×4との甘々アパート生活はじめます
著:神里大和先生
絵:ねいび先生

 

ではここからは、富士見ファンタジア文庫の新作に移ります。まずは今月唯一の新刊、どうやらおねショタ系であるらしいこちらの作品です。最近、年上女性とのラブコメものは増えてきていますが、この作品ではどんなラブコメが繰り広げられるのか楽しみです。

 

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さよなら異世界、またきて明日 II 旅する轍と魔法の鞄
著:風見鶏先生
絵:にもし先生

 

では続きましてはこちらの作品、このブログでも感想を書きました作品の続刊となります。彼等の旅の続きはどんなものか。この幻想的な表紙はどんな景色なのか、私、気になります。

 

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転生魔王のジュリエット2
著:久慈マサムネ先生
絵:みやま零先生

 

では最後はこちらの作品。やはりこのブログでも感想を書きました作品の続刊となります。今度はどんな争乱が繰り広げられるのか、楽しみです。

 

 

以上、個人的に楽しみな六作品でありました。では明日からの発売を楽しみにしつつ、明日に備えると致しましょう。

 

 

 

 

読書感想:聖剣学院の魔剣使い

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突然ではあるが画面の前の読者の皆様、貴方はこの作品の作者であられる志瑞 祐先生の事はご存じであろうか。もしご存じでないという方は、精霊使いの剣舞という作品の名を聞いたことはあられるだろうか。

 

そう、MF文庫のファンタジー枠の金字塔であり屋台骨の一つである作品であり、アニメ化も成し遂げられている作品である。因みに私はあの作品ではフィアナが一推しであったがまぁその話は脇に置いておくとしよう。

 

さて、そんな士瑞先生が今現在MFで連載されコミカライズも達成されているこの作品は果たしてどんな作品なのだろうか。そう問いかけられたのならば私はこう答える。これは、士瑞先生の十八番の流れを継ぐ王道的なファンタジーであると。

 

主人公であるレオニス(表紙左)は魔王である。圧倒的に強大な力を振るい暴虐を尽くした魔王であり、未来に起こるであろう決戦に備えて自らを封印した存在である。

 

しかし、彼が目覚めたのは千年後、全てが変貌した世界。魔法がその存在を失い、生物の身を穢し歪める未知なる敵、「ヴォイド」へと武器の形を取る異能、「聖剣」で立ち向かう、彼にとっては全くの未知なる世界だったのである。

 

そんな世界で彼と出会い、保護する事になったのは聖剣使いの卵であるリーセリア(表紙右)。彼女もまた、レオニスと同じくこの世界に馴染めぬ事情を抱えた者であり。

 

その二人が出会って齎されるのは新たな日常。そして、新たな戦いの日々だった。

 

子供として見られているから一緒にお風呂に入る事になったり。リーセリア率いるチームに参加し戦う中で、彼女が自らの力である聖剣が目覚めたり。

 

そして、レオニスの前に立ち塞がるのは過去の残滓。あの日敵となり戦った英雄がヴォイドに侵され歪められた存在として襲い来る。

 

対し、レオニスが目覚めさせるのは女神から託された反逆の力。タイトルにもある通り、禁忌の力である魔剣の力。

 

「運命など、この手で蹂躙してくれる」

 

その姿、幼くなれどその心はあの日の魔王のままに。

 

正に王道にして痛快、熱さ極まる愉快爽快なファンタジーと言うべきこの作品。今巻だけ取り出してみればまだ始まったばかりの重厚なる存在が目覚め動き出したばかりと言わんばかりのペースであるが、これから大作へと成り上がっていく事が半ば約束されたこの作品だからこそ許されたペースか。

 

だからこそ、どうか画面の前の読者の皆様、特にファンタジーが好きな読者様もここから入ってきてほしい。きっと楽しめる筈である。

 

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読書感想:GODZILLA 怪獣黙示録&GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様、貴方はアニゴジことゴジラ映画初の長編アニメーション作品として公開されたアニメ三部作はご覧になられたことはあるだろうか。もし見ておられるのであれば話は早く、見ていない場合は是非見てみてもらいたい。

 

因みに三部作全て、友達と一緒に見たものの、哀れにも儚い希望を抱いてゴジラに立ち向かい蹂躙され絶望する登場人物達が一番楽しめたと言ったらドン引きされたのがこの私である。仕方ないじゃない、人類なんて滅んでしまえばいいとこの映画を見ていた中では思っていたので。

 

さて、では角川文庫より発刊されたこの二作品は一体、何を描いているのか? その答えは只一つ、前日譚である。そして愚かしくも輝かしい繁栄の歴史を作り上げていた人類の世界が滅んでいく最後の景色を描いた作品なのである。

 

その日、人類は怪獣に出会った。誰も知らぬ絶望が突然に非日常を呼び込んだ。ニューヨークの街を絶望に追い込み、人類に怪獣の脅威を叩きつけた怪獣、その名はカマキラスカマキラスの撃退を辛くも成し遂げた人類に対し襲い掛かるは宇宙からの来訪者、ドゴラ。

 

そう、その日人類と怪獣の争いの歴史は始まったのだ。そして、怪獣の脅威に慣れ始めた頃、人類はゴジラという本物の絶望を知る。

 

インタビュアーとして話を聞く耳を向けていた、ハルオの父親であるアキラへと生き残った人々が口々に告げるのは絶望したあの日の思い出。

 

その思い出が語る通り、ゴジラがこれでもかと思い知らせてきたのは人類なんて無力であり、神の前に滅ぼされるしかない塵芥であるという事だ。

 

怪獣黙示録で語られる世界中で巻き起こっていた戦いの中、人類が様々な怪獣を相手に収めた勝利は確かにあった。しかし、その後を描いたプロジェクト・メカゴジラ。その中で語られていたのは陰惨にして凄惨な戦いの記録だ。

 

メカゴジラを守る為、多くの精鋭達がゴジラ北アフリカ大陸へ誘導する為に戦い、まるで王が往く道をその血で染め上げるかのように散って逝った。荒廃した世界で生きていた子供達すらも巻き添えとして。

 

凍土から掘り出された怪獣、ガイガンも犠牲となり、挙句の果てにはヒマラヤの壮麗な山々すらも核で切り崩した、ゴジラを生き埋めにするために。

 

だが、奴はそんな人類の悪あがきを鼻で笑うかのように悠然と立ち上がり突き進み、人類を絶望へと追い込んだのである。

 

最終決戦すら徒労と化し、東京すらも炎で染めて。その炎の中、無垢な子供達はメカゴジラの到着を信じ歌い、だけど真実を知った大人達は絶望し。

 

だがそれでも、誰もが自分の戦いを精一杯生き抜いていたのだ。絶望の中、必死で抗い希望を信じて散って逝ったのだ。

 

「おかえりなさい」

 

最後に込められたこの言葉。いつか帰ってくるはずの同胞達に届けと書かれたこの言葉は果たして届いたのか。帰還した同胞たちがどうなったのか。それは是非、映画を見て確かめてほしい。

 

この作品を読む際は映画三部作を見た後で。その方が楽しめる筈である。

 

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読書感想:弱小ソシャゲ部の僕らが神ゲーを作るまで1

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突然ではあるが画面の前の読者の皆様、貴方は嵌っているソシャゲってあられるだろうか。もしくは、仲間達と情熱を注ぎこんで、何かを共に作り上げたという経験はあられるだろうか。

 

さて、この作品中の日本では「IT促進法」なる謎の法律が存在している。ではその法律が存在している事で何が起きているのか。その答えは、学生の部活としてソシャゲ制作と運営が奨励されているという事である。

 

学生がゲームを作るまでは、何処かのライトノベルで前例があったかもしれない。しかし、ソシャゲという今流行のゲームを題材にしたことはあるだろうか。ましてや運営なんて裏方の仕事を題材にしたことはあっただろうか。私の知る限りではない筈である。

 

そして、この世界においてはそんな誰も見た事が無い日常に全力を賭けている子供達が存在しているのだ確かに。

 

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主人公である解は名門高校でソシャゲのプランナーをしていた経歴を持ちながら、とある事件により運営の場を去り新潟へと逃げるように転校してきた少年である。そんな彼が出会ったのは、廃部寸前のソシャゲ部とそこに所属する三人の少女達。

 

情熱のままに駆け抜ける部長、七花。

 

自らのイラストで絶頂してしまうイラストレーター、絵瑠。

 

ガチャに全てを捧げたガチャ狂いのプログラマー、文。

 

更に、そこにあったのは真の力を出し切れていない、無限の可能性を秘めた一つのソシャゲ。

 

そして、解は取り戻していく事になる、あの日胸に燃えていた熱を。あの日に落としてしまった、一度きりしかない青春を。

 

そもそもソシャゲを作る事すらもう嫌だと言った筈だった、だけどソシャゲを調べる事は止められなかった。

 

未熟な彼女達に指導を重ねていった、断る事だって出来た筈なのに。

 

だけど、それでも関わってしまったのだ、またこの世界に。そこで出会えたのだ、誰よりも大切にしたい仲間達に。

 

だからこそ、彼は振りほどけたのだろう、あの日から絡まって続いてきていた因縁の鎖を。だからこそ進めたのだ、絆を切り裂く為ではなく引き合う勇気を持って。

 

「彼女たちがいれば、大丈夫です」

 

この一言に込められた想いは如何程か。想像するに余りある。

 

この作品は、次々と絡み合って襲ってくる問題と、一筋縄ではいかぬ人間関係が交錯するリアルな運営の現場を描いた作品である。そして、個性と魅力に溢れた子供達がその情熱のままに創作へと挑み、再び解少年の心に創作の炎が燃え出す青春の輝きと熱さに満ちた作品なのである。

 

だからこそこの作品は、こんなにも魅力を持っているのだろう。受賞するのも個人的に納得である。

 

 

瑞々しくて熱い青春を楽しみたい読者様は是非。きっと満足できるはずである。

 

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読書感想:俺の女友達が最高に可愛い。2

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前巻感想はこちらから↓

yuukimasiro.hatenablog.com

 

「好き」は何処から「好き」なのだろう。好きという気持ちの違いは何処から来るのだろう。

 

さて、前巻で女友達という恋人ではない関係を選んだカイとジュン。一見するとこれ以上ない程に鉄壁で安定した関係に落ち着いた二人はどうするのか。

 

今巻の主役はどちらかといえばジュンに非ず。今巻の主役はカイのバイト先の後輩、琴吹である。

 

前巻のエピローグでとんでもない爆弾をぶち込んでくれた彼女が、付き合ってほしいと貴方が欲しいとカイに迫る。そのぐいぐい来る攻めに翻弄されてしまうのが今巻のカイの主な役目である。

 

そう、「好き」なのである。しかしその「好き」は、カイにとって未知の好きなのである。

 

そもそも前巻でカイは恋人で出来る事は友達でもできる、だったら友達でいいじゃないかと選んでしまっている。そう、出来るのである、出来てしまうのである。だからこそその「好き」はカイには分からないのである。

 

そして同時に、琴吹にとっても「未知」であるのがカイとジュンの「親友」という関係性なのだ。

 

琴吹から見てみれば、この二人はどう見ても恋人同士である。それが間違いない程にいちゃいちゃしている。しかしこの二人は親友なのである。一体全体、どういう事なのだと戸惑い混乱してしまう。その心のままにジュンに詰め寄ってみても、まるで懸命に吠えるチワワが手玉に取られ可愛がられるかのように、愛でられてしまう。

 

だけど、それでもと。陰キャなりの勇気を出して一生懸命に健気にアプローチする琴吹。そんな彼女とのデートは心地よくて楽しいもので。

 

それも当然であろう。何故なら、カイとジュンが噛み合うかのようにカイと琴吹もぴったり噛み合うかのように趣味も息も合うからである。

 

「なので、友達から始めませんか?」

 

今巻は言うなれば、カイと琴吹が知らなかった未知を体験する巻であり、少しだけ成長した二人が友達の輪を広げる、女友達の輪が広がりこの作品特有の面白さが更に深みを増す巻である。

 

少しだけ広がる人間関係は、確かな変化の香りを運んでくる。カイの心に生まれた微かな変化は何を齎すのだろうか。これからも楽しみにしたい。

 

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読書感想:邪神官に、ちょろい天使が堕とされる日々

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突然ではあるが画面の前の読者の皆様、一つお聞きしたいのであるが、天使と聞くと貴方はどの天使を連想されるだろうか。様々な創作上で天使は題材として扱われるが、天使と聞くと何処か神秘的な存在として認識されるだろうか。

 

しかし、この作品のヒロインである堕天使、チェルシー(表紙右)は奴隷である。そして神秘的な所は見当たらぬ、俗っぽい天使である。

 

それは何故か。その理由は彼女の主である、この世界において絶対的な神に仕える神官であるギィ(表紙左)がRPGであれば信仰値がゼロを示しているであろうと容易に想像できるほどに信仰心がない、言わば不良神官だったからである。

 

本当なら奴隷であるはずなのに。ギィはチェルシーを綺麗に着飾り、膝の上に乗せたりして甘やかし、一緒に食事をとったりとこれでもかと甘やかす。

 

そんな彼に応えるかのように、ちょろさを見せながらも基本的にディスるスタンスでいきながら、ちゃんと大切な所では共に並び立ち協力するチェルシー

 

正に一種のケンカップルと言わんばかりの、噛み合っていないように見えて実はしっかりと噛み合っているこの二人。

 

「――構え! 慰めろ、そして、甘やかせ、主さま!」

 

そんな二人が戦うことになるのは何か。それは譲れぬ信念を抱え、絶対の神に敵対する事を選んだ者達。そして、神の威光の名の元に自らの行いを正当化し、拭いきれぬ悪逆を為す悪魔にも等しき人間達である。

 

そも、この世界は神々が覇権を争い戦い合い、全ての敵対する者が滅びへと追い込まれた世界であり。そして勝利し唯一神となった神の名の元に神官達は絶対的な力を持つのである。

 

だけど、それでもギィは自らの敵と定めたのならば、神にすらその刃を突き付け。その傍らに天使としてチェルシーは付き添い。そして、二人が並び立ち支え合うからこそ使うことができる無敵の力がある。

 

これは、骨太で広い世界のファンタジーである。そして、唯一無二の凸凹コンビである主従が世界を旅しながら、自らが定めた悪を倒していく、男子の心のど真ん中に突き刺さってきそうな熱さと疾走感あふれる、爽快感のある面白さ溢れる作品なのである。

 

 

ケンカップルが好きな読者様、凸凹相棒コンビが好きな読者様、王道なファンタジーが好きな読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。

 

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