読書感想:男女の力と貞操が逆転した異世界で、誰もが俺を求めてくる件

 

 さて、ラノベの流行というのは移り変わるものであり、読者の好き、というものの変化によって変わるものらしいと聞いたが。最近少しずつ、貞操逆転ものが一つ、ジャンルとして流行を始めた気がするのは私だけだろうか。では貞操逆転もの、の面白さとはまずどの辺りなのだろうか。やはり、割と合法的にハーレムできる事だろうか。

 

 

貞操逆転もの、そのジャンルについている事が多いのは、男性の方が貴重という設定。その設定があるからこそ、男性に多くの女性が付くことは作品内においては当たり前のことで。だからこそ、ハーレム。それが好き、と受け入れられているのかもしれない。この作品もまた、そんな貞操逆転ものの一つなのである。

 

 

「あれ、もしかして俺は死んでしまったのか?」

 

ごく普通の高校生の少年、ソーマ。ふと気づくと彼がいたのは、一面に広がる草原。最後の記憶を思い返してみれば、猛スピードで突撃してきたトラック。どうも今だと若干古めなパターンで異世界転生してきたらしい、と思うのも束の間。スライムに襲われ服だけを溶かされ。その場に通りかかった高ランク冒険者パーティ、「蒼き久遠」のエルミー(表紙中央)、フェリス(表紙右)、フロラ(表紙左)の三人に助けられる。

 

「女である私の胸などどうでもいいだろう!?」

 

しかし、何やら反応がおかしい。ソーマの半裸を見るのが恥ずかしい、とエルミーがシャツを躊躇いなく脱いで押し付けて来て。

 

「安心しろ、ソーマは必ず私達が守る!」

 

更には街に連れて行ってもらう際に襲ってきた盗賊がどう見てもソーマ狙いで。そこで気付いたのはどうもこの世界は、貞操と力が逆転した異世界であるらしい、という事。

 

「いえ。本当に気にしていませんから大丈夫ですよ」

 

そんな世界で、ソーマの素朴な優しさはどう見られるのか。当然、まるで天使のように敬われる。可憐で優しい、まさに婿にしたい。これがソーマのこの世界での評価。更にはこの世界でのジョブが、男のみが使える回復魔法、それを扱うジョブの中でも最上級の「聖男」であると判明し。その一個下の「男巫」というジョブだと誤魔化し、ギルドに所属する治療士として、この街で生活する事となる。

 

程なくし、ソーマはあっという間に受け入れられていく。治療士、時に強欲な者達の中でも無欲、それどころか平等に全員救う者として正に神様の様に、信仰対象のように。エルミー達に守られながら、時に男を攫ったオークの群れを追いかけたり、海沿いの街に治療に出向いたり。更には王都で毒に侵された第二王女の治療に挑んだり、と。どんどんと活躍の場を広げていく。

 

「俺にもよく分からないんだけど、突然頭の中にこの魔法が浮かび上がったんだ」

 

そんな中、王女を庇って誘拐される事となり、闇ギルドの面々を前に貞操の危機、そこに助けに来てくれたエルミーたち三人を救う為に願った時。ジョブが授けてくる、回復だけではない新たな力があるのである。

 

貞操逆転ものの真っ直ぐな面白さが込められたこの作品。貞操逆転ものが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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