読書感想:鴉双兄妹の怪奇に歪んだ日常

 

 さてさて、昔怪談にて大けがを負い意識不明だった弟が目覚めたら、全く別人の名前を名乗りだした、という話を見た気がするのだが、あれは学校の怪談シリーズの何巻目だったろうか。というか今の小学校中学校の図書室にあのシリーズは置かれているのだろうか。それはともかく。霊と言うのは基本見えないだけで周りに存在しているかもしれない。ならば怪奇、というのも身近に存在しているのではないだろうか。

 

 

ではこの作品はどういう作品かというと。時雨(表紙左)と女子高生インフルエンサー、凛音(表紙右)の鴉双兄妹が、怪奇の世界に飛び込み生還しながら、歪んだ絆を抱え生きていくお話なのだ。

 

【今回の怪異は、おそらく絵画で、たぶんマズいヤツ】

 

凛音の親友、桜子からずる休みの一方を受けたり、ヤクザのお家のお嬢様な級友、ゆゆかを連れて先輩たちから挑まれた賭けポーカーで無双する中で。時雨のスマホに飛び込んできたのは凛音からの緊急メッセージ。

 

『まーた、テメェの妹は怪奇事件に巻き込まれてんのかよ。今月何度目だ?』

 

急ぎ飛び出す、その途中アクセスするのは、本来はアクセス権限がない会員制AIアプリ、「バベル」。意味のなさそうな二度の間違い、口調が人間のように荒くなるバベルに入力するのは緊急コード。時雨にしか見せぬガラの悪い顔のバベルを相方として、時雨は妹を迎えに行く。

 

「ここが境界線だな」

 

では凛音は何処にいるのか。それは怪奇蠢く場所に。周囲に隠している秘密、巷でささやかれる奇怪な噂の中から本物を探し向かっていく「怪奇廻り」。普段は見逃しているけれど、助けを求められたのならば行く。だが時雨は別に除霊の力を持っている訳じゃない、そもそも霊感もない。なればどう、怪異に立ち向かうのか? それは自身の頭脳と閃きで。怪異の世界のルールを解き明かし、対抗策をその場で編み出して。バベルを相棒に、妹を助けに行くのだ。

 

ある時は廃屋敷に存在する、人食いの絵画に立ち向かい。またある時は、金策の為に怪しい喫茶店の店主、カグラと密談し。またある時は、凛音の昔の友人が巻き込まれた裏図書館へ、兄妹揃って立ち向かって。

 

『全てはあの怪奇に関わっているからだ』

 

「・・・・・・そうだとしても、見つけてみせます」

 

その裏には、怪奇が潜む。呼び集めるかのように他の怪奇を呼ぶ、特異点がごとき怪異が。凛音は秘かに願う。怪奇廻りの中で探すものに巡り合う事を。素性も姿形も、存在したかもわからぬ怪奇。四年前、凛音を殺し「凛音」を生み出した怪奇を。

 

想い、まだ交わらず。録でもない変化が待つ、いつか破滅が来ると予想しながらも。時雨は歪みを自覚しながらも、妹を守るのである。

 

怪奇に挑むミステリー、大きな物語が繰り広げられるこの作品。引き込まれるような作品を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 鴉双兄妹の怪奇に歪んだ日常 (MF文庫J) : 鳳乃 一真, 花澤明: 本