読書感想:暴虐非道の極悪貴族を演じてるだけなのに! 敵対するはずの貴族令嬢たちがなぜか全肯定でデレてくる

 

 さて、悪役とはどんな悪役であれば魅力的なのだろうか、いきなりだが。独特のカリスマを持っている、もしくは圧倒的な力を持っている、など色々あるかもしれない。だが、ただ下種な悪役よりも一種の芯を持っている悪役の方が魅力、となるのではないだろうか。

 

 

という訳でこの作品はどんな作品なのかと言うとだが。タイトルは明かされていないが、とある作品における極悪貴族である悪役、ゼノス(表紙奥)に転生してしまい、都合あって悪役を演じたら、何故か聖者扱いされてしまう、というお話なのである。

 

とある作品に存在する、武によって成り上がってきたオールヴェイン公爵家。その嫡男であるゼノスは、十四歳にしてまさに死神が如く、独特の死臭を纏い。領地の民たちにも恐れられていた。

 

「ゼノスに転生するとか、悪夢以外の何物でもないんだけど・・・・・・!」

 

そんな彼がある日訪れたのは、領内にある奴隷商館。出会ったのは奴隷である猫の亜人、フィオナ(表紙中央)。彼女の中、眠っていた生への意識を、全てを燃やし尽くす事で呼び覚まし、自身の飼い猫とすると宣言した後、不意にその意識は途切れ。次の瞬間、その意識は原作を知る者。ごく普通のブラック企業勤めだった、らしい男の魂に乗っ取られていたのだ。

 

「あえて原作通りの展開をなぞらえるえき、か」

 

転生して三日後、状況整理は完了。改めて思い出すのはゼノスの圧倒的な強さ。現在本編開始一年前。チートパワーを覚醒させた主人公を最後まで舐めプしていたから負けただけで油断しなければ勝てる。だが、主人公と衝突しなければ覚醒も出来なくなるかもしれず、シリーズ通してのラスボスと倒す事も出来ず最悪、世界の滅亡。ではどうするか。主人公が覚醒するまでは悪役を貫き、覚醒したらすべて押し付けフェードアウトするのがいい。という訳で予行演習として、ゼノス本来の極悪貴族ぶりを演じる事に。

 

「こんなものを口に入れるなど、到底、耐え難い。ゆえに・・・・・・コレはお前が処分しろ」

 

「そのゴミはお前が処分しろ」

 

「我が領土で暮らすなり、出て行くなり、勝手にするがいい!」

 

 

した、のはいいのだが。彼にとっては予想外、勘違いの事があった。極悪な事をしている筈が、致命的に出来ていない。やっているのが結果的に善行になっている。それは勘違いと言うのもあるだろうが、きっと世界との価値観の違い、そして彼自身の人間性が何処までも悪役に向いていなかった、というのもあるのだろう。 結果、フィオナに上質な飯を食わせる事になり、希少な龍の亜人であるナターシャの生まれ育った孤児院を救う事になり、更には共同の領地を脅かす賊を全員雇用する事で犯罪から足を洗わせる。

 

 

「大聖者さまか、あるいは始祖様か」

 

「何もかも、ゼノス様のおかげよ」

 

「よもやゼノスは、噂通り・・・・・・」

 

 

そんな事をしていれば怪しまれても仕方ない? と思いきやどうもこの世界、輪廻転生の概念があり人格が変わるという事態も一般的に認知されているらしく。結果、彼は聖者なのではと言われ崇められ始め。原作ヒロインの一人、エリザ(表紙右)も本来主人公へ向けるはずだった好意が全て彼へと向いて。段々物語は彼の知らぬところで崩壊を始める。

 

「お前達は大きな勘違いをしている。俺にはそのような気など、微塵もない」

 

そんな事に気づかず、ちょっと不安は覚えつつも物語本編開始、学園へと。そこで遂にゼノスは知らされる。原作、とんでもなく崩壊していると。本来の主人公であるジークは何処か軽薄な、成長性なさそうな少年になっており。彼がなすはずだった宰相討伐が何故かゼノスの元に話が来てしまう。勘違いを解こうとするも積み上げた好感度は覆らず、話は聞かれず。

 

「―――目に余るな、公僕」

 

「我が切り札の一つを。見せてやる」

 

どうしたものかと頭を抱える中、メインヒロインである落ちこぼれ王女、セリーナまでも虜にしてしまい。更に頭を抱えながらも最低教師を吹っ飛ばし。より原作を崩壊させてしまうのだ。

 

動けば動くだけドツボにハマっていく、独特な笑いがあるこの作品。 独特な笑いを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 暴虐非道の極悪貴族を演じてるだけなのに! 敵対するはずの貴族令嬢たちがなぜか全肯定でデレてくる (ファンタジア文庫) : 下等 妙人, ファルまろ: 本