
さて、時に毒殺というのは歴史上の権力者の死因の一因ともなった殺し方でもあり、現代においても殺人事件というものを紐解いてみると犯行方法として存在しているかもしれない。しかし、例えばドラマのように服毒してほぼすぐ死に至る毒、というのは中々に存在しないらしい。そう考えると毒殺というのは、中々に勿体ぶった殺し方、と言えるのではないだろうか。
さて、ではこの作品はどんな作品なのか、というと。死ねない「魔女」、加恋(表紙)の毒殺を目指すお話である。その毒、というのはどんなものなのかというと。それは「恋」という毒である。
「私はね、死ねないんだ」
中学二年生の時、捨て猫を通じ出会った加恋と、家庭環境に問題を持つ少年、虎徹。本格的に仲良くなり始めたのは中学三年生の時。そして卒業式の日、二人だけで出かけた海で目撃することになったのは、加恋の不死。悪魔に呪われ、催眠の力の代わりに不死を得た彼女は死にたいらしい。その為に必要なのは、真に彼女の事を愛する恋人に殺されること。
「そもそも、『真実の愛』なんていうけど、僕がお前のこと好きだなんていつ言ったんだよ?」
しかし、虎徹はそんな事をしたくなかった。何故なら彼も死にたいと願っていたけれど、彼女に救われたから。だから彼は嘘をついた。好きなんかじゃない、と。その嘘に騙され加恋はまだ生きる事となり。同じ高校に入学し、新たな日々が始まる。
「その為に、確実な手段を選びたいんだよ」
文芸部員である糖財と仲良くなったりもする中、声をかけてきたのは加恋の姉、という事になっている悪魔、花梨。己の目的のために虎徹を呪いたい彼女。しかし虎徹は花梨の、未来を見る力に加恋を救うための可能性を見出す。「不遇」の呪いを受ける代わりに花梨を使い魔とし。未来を見ながら、加恋を救うための道を探す。
「死にたいってのは、あなたの気を引くための嘘」
模索の日々の中、交じり合うそれぞれの道。判明する糖財の正体、そして加恋が隠していた嘘。それは今まで取っ散らかっていたすべての点を一本の線の上につなげる、というもの。加恋が隠していたのは重い愛。それは虎徹、只一人へ向けたもの。本当に欲しいのは彼一人の愛だった、という事。
「僕が本当に誰が好きなのかは、自分でしっかり決める」
だがそれは虎徹の思いをゆがめる、という始まりから。ではどうするのか。もう一度始めたって、追試を受けたっていいだろう。もし加恋の事を本当に好きになったのならきちんと自分から言うから、と告白し。もう一度日々をリスタートさせるのである。
若い感性らしい瑞々しさと粗削りな重さが見どころであるこの作品。瑞々しい作品を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: 魔女と毒殺文芸部 Curse.01 『不死』の魔女は僕に殺されたいようです。 (MF文庫J) : 最条 真, luna: 本