読書感想:あそびのかんけい

 

 さて、別に大した話でもないのだが私の実家から自転車で三十分くらい走った所にあるブックオフの二階にはボドゲカフェがあったりする。人が入っているのは中々見たことはないのだが。とまぁそれはともかくとして。最近、ボドゲカフェというのは一定の流行を見せ、画面の前の読者の皆様の中でも生活圏内で見かけたことがある、という読者様もおられるのではないだろうか? しかしボドゲカフェ、というのは中々入りにくい、ものかもしれぬ。何せボドゲというのは普通に多人数用、一人だったりするとそもそもプレイできなかったりするので。

 

 

とまぁそんな前置きはさておき、この作品ではボドゲカフェ、を舞台にする訳なのだが。著者である葵せきな先生の著作と言うと生徒会の一存、ぼくのゆうしゃ、ゲーマーズ!等が有名であろう。このうちぼくのゆうしゃ、は中々にヘビーでお辛い展開が多かったので、同じく平仮名のみのタイトルであるこの作品も、ヘビーだったりしないか? と思われる方もおられるかもしれない。だが安心して欲しい。この作品、先に言ってしまうとゲーマーズ!の方の系列である。読者と言う神の視点で読むと頭を抱えつつも楽しめる、人間関係こんがらがり過ぎ、なラブコメなのだ。

 

東京都荻久保の雑居ビルにある、常に閑古鳥が鳴くボドゲカフェ、「クルマザ」。この店の店長代理である中卒の少年、孤太郎。通称「バンジョー」。彼には惚れ込んでいる相手がいた。その名はみふる(表紙)。自身とは正反対、オタクの天敵的なギャルであり、このカフェのバイト店員。

 

「まずはサイコロを振らなきゃ、恋は始まらないぜ」

 

時にギャルらしい容赦ない一言を放つ彼女と軽いじゃれ合いのような口論をしたりしつつも。彼はみふるに告白できないでいた。何故かと言うと、みふるには恋人がいたから。その名も樹、毎回バイト終わりに迎えにくるイケメン彼氏。

 

だから彼は、恋する相手を隠し偽っていた。その相手とは女流棋士の月乃。だが何の因果か、彼女は変装し「ウタマル」という偽名でこのカフェの常連であり。

 

「キミは、そんなに、愚かな人間じゃ、ない」

 

「あそびの、かんけい」

 

さてここよりはネタバレになってしまうので是非自身の目で確かめてみてほしい。一先ず言えることは、樹というのは実は意外な人物であり。孤太郎が中卒になったのには、彼らしい不器用な優しさに満ちた理由があった事。みふるがこのカフェでバイトし、幸せそうな姿を孤太郎に見せているのには理由があると言う事。今ここに始まるのだ。それぞれの秘密を抱えた「あそびのかんけい」、が。

 

もういっそ明かしてしまえば楽だろうし、きちんと話し合えば分かるであろう。だがどうもこの先もっと拗れる予感しかしない。だがそこにこそワクワクと面白さがあるのだ。

 

葵せきな先生らしいラブコメを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: あそびのかんけい (ファンタジア文庫) : 葵 せきな, 深崎 暮人: 本