読書感想:ほうかごがかり3

 

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読書感想:ほうかごがかり2 - 読樹庵

 

 真絢が消え、イルマが飲まれ、惺が傷つき、留希が取り込まれ。気が付けば啓の周りの「ほうかごがかり」の者達はどんどんと、いなくなっていった。だけど「無名七不思議」は、子供達の命を取り込み、現実世界へと溢れ出さんとする。そんな怪異共へ抱くのは怒りか、それとも。いよいよ残り少なくなったほうかごがかり、ここから何を目指し動くのか、が示されるのが今巻である。

 

 

「キミがそう訊ねて、あいつがここに来てないってことは、そういうことなんだろ」

 

「僕が、惺のやろうとしたことを、引き継がなきゃいけない」

 

惺げ現実世界で死んで、それを受け止める間もなく呼び出される「ほうかご」。その校舎の中に居たのは、顔に穴の開いた留希。追われ逃げる中、手に入れたのは留希のランドセル。その中にあったボロボロのノートから察するのは、留希が死んだ理由と惺がそこに巻き込まれたという事。自身の命が惜しくないからこそ、惺の無念を晴らす事を決意した啓は「太郎さん」から七人目の「かかり」を紹介される。

 

その名は由加志、引きこもりの少年。彼の担当はあの「開かずの間」。だがそれでも怖いからこそ、部屋の中の開くもの全てを物理的に封じるという方法で呼び出しを回避し、それを惺に知られたが、惺が「開かずの間」の観察を引き継ぐことを対価に、惺から引き継ぎの案内人になる事を託された者。彼に見せられた惺の遺書、そして「太郎さん」からの話で知るのは、「ほうかご」の学校を囲む亡霊の影、「学校わらし」は「無名七不思議」を外に出さぬための檻を作っており、死したかかり達の亡霊である事。そして七不思議は、何を食うかと言う事。

 

「惺のできなかったことを、僕が全部やってやる」

 

それを聞き、惺は正に犬死であった、と知り。啓は決意する、怒りと使命感のままに。どうせ自分は死んでもいいから、と覚悟を決めて。死したかかりの全ての七不思議の観察を引き継ぐことに。

 

それは、理不尽な世界へ対する反抗。全ての七不思議を一枚の絵に、という決意。当然全ての七不思議は啓に牙を剥く、その裏で菊もこっそりと啓と同じことをし、少しでも彼を支えたいと献身を見せる。

 

そこに込めるのは正に狂気。その中で、菊は啓を最後まで守る為にその命を散らし。たった一人、全てをその身に背負った啓が書き上げた絵、だがそこには何かが足りず、啓までもが飲み込まれそうに。 そこへ駆けつけた、死した菊の思いの助力で見てしまったのは、全ての根源、無名七不思議が生まれ出る場所。そう、無名七不思議は只の表層に過ぎず。怪異、その根底こそは神。真なる恐怖に飲み込まれてしまいそうになる中、由加志の電話で事態に気付いた啓の母親の叫び、そして菊が最後に遺した思いによって、「ほうかご」の輪の外へ。 そこで啓は「卒業」となる。

 

「そっか。じゃあ、君が今の―――」

 

そして時は経ち数年、もう「ほうかご」に関われなくなった啓は、新たな戦いを始めていくのだ。

 

覚悟と狂気、その先に一つの終幕が起きる今巻。シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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