前巻感想はこちら↓
読書感想:ほうかごがかり - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれている方が今巻の感想を開かれていると言う前提の元にここからはネタバレに配慮せず感想を書いていく訳であるが。前巻の最後、「赤マント」に取り込まれて真絢が存在ごと消えてしまった訳であるが。さて真夜中のメルヘン、もといホラーは今巻からも一巻で一人、くらいのペースで進んでいくのか。そう思いたい、そう思いたかった。だが、どうもそうも言っていられないらしい。
真夜中のメルヘンは加速する、しかもエグイくらいの勢いで。怪異はより、恐ろしく、牙を剥く。それぞれの心の中に、侵食しようと手を伸ばしてくる。よりエグく、より恐ろしく。ほうかご、という時間が本格的に牙を剥くのが今巻なのである。
「死ぬのが怖いのは当たり前だよ、惺」
臆病なイルマにとって、真絢の存在は救いであった。惺に相談しても、軽く見られていると思ってしまい、禁則事項として大人の存在は頼れなくて。そんな中で真絢が怪異に取り込まれてしまい、精神の均衡を崩して。彼女の、ムラサキカガミを書いてほしいという依頼を啓は受け入れ、早速作業を開始する。
だけどそれは、完成しなかった、中々。啓が感じる足りないピースへの違和感、焦りに駆られより追い詰められていくイルマは、己の夢、幻像に囚われていき。それはより、大切なものを見えなくしていって。 その隙を逃がさないと言わんばかりに、ムラサキカガミが牙を剥く。
「―――連れて行って。ボクを」
気づいた、怪異としての本性。ムラサキカガミの都市伝説、そこに秘められた真実。焦りの果てに心は折れて、怪異に自分から手を伸ばして。イルマもまた、怪異に引き込まれて飲み込まれる。
「じゃあ、絵の方は、僕が書くよ」
その結果に自信の力不足を感じ、その先に見てしまうのは、菊の担当である怪異、「テケテケ」。 最初の対応を間違えてしまい、対応できぬままに育ってしまって。最早猶予は幾ばくも無い、綱渡りの状況。そんな中でも、未来へ向けて何かを残そうと。惺と菊と一緒に、一本の動画を完成させようとしていく。
だがその裏、もっと面倒で厄介な怪異が迫っていた。いじめられっ子である留希、その担当である「こちょこちょおばけ」、は擽ってくるだけという一見すれば何も害のない怪異。だが、留希に話しかけてきたかと思えば、どんどんと知恵をつけて。まるで惹かれるように友人となってしまった留希の味方であると、どんどんと日常生活に侵食を始めて来て。気が付けば「ほうかご」を越え、一足飛びに現実世界へと進出を始めてくる。
そして、遂に訪れてしまう決定的な事態。いじめっ子たちに対する報復、巻き込まれ傷つく惺、引き込まれる留希。 心の弱い者、芯のない者は容赦しないとでも言わんばかりに。一気に「ほうがごがかり」はその人数を減らしてしまうのだ。
よりメルヘン、よりホラーに一気に引き込んでくる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: ほうかごがかり2 (電撃文庫) : 甲田 学人, potg: 本