読書感想:無能の悪童王子は生き残りたい ~恋愛RPGの悪役モブに転生したけど、原作無視して最強を目指す~

 

 さて、昨今のラノベの流行の一環として、悪役転生というものがある、というのはもう何処かで語ったかもしれない。破滅の運命を決定づけられた悪役に転生し、その運命を覆す為に全力を尽くし未来を切り開いていく、というのが骨子である。 そういう作品が増えてきて、いわゆる似ている作品が増えてきているからこそ、もうそろそろ個々の作品の力が問われ始める時期、なのかもしれぬ。ではこの作品はそういった悪役転生ものの流れを汲んでいる訳であるが、どんな作品なのか。その辺りを見ていきたい。

 

 

主人公が次期国王に選ばれるために「世界一の婚約者を連れてくること」を目的としてたくさんの個性的で可愛いヒロインと出会い冒険をする、熱いバトルとチャット型恋愛パートを楽しめるスマホRPG「エンゲージ・ハザード」。通称「エンハザ」。サービス開始前から話題を集め、サービス開始後は空前絶後の大ヒット、しかしリリース半年で運営会社の倒産により、前触れもなくサービス終了してしまったこのゲーム。 その西方諸国の列強の一つであるデハウバルズ王国。ゲームの舞台であるここの、姑息で卑劣で長いものに巻かれる、要はスネ夫みたいなタイプの、噛ませ犬にもなれず最後は主人公の目の前で処刑される第三王子、ハロルド(表紙中央)。主人公は何故かそんな存在へ転生してしまっていた。

 

「三年、僕に時間をください!」

 

しかし幸いな事と言えるのか、主人公が転生したのは物語開始三年前。つまりまだ時間はある。 そしてハロルドとして幸せにしたい相手がいた。それは王が決めた婚約者である公爵令嬢、アレクサンドラ(表紙左)。 イベントスチルで見た彼女の涙はもう見たくないから、と。三年待っていて欲しいとお願いし、早速ハロルドは釣り合う自分になるために行動を開始する。

 

アレクサンドラの命で仕える事になった侍女、モニカ(表紙右)を傍らに。戦闘キャラとしてはあまりにもピーキーな自分をどうにかしようと、早速方向性を模索する。

 

さて、彼には何があるのか。防御力はほぼ紙、攻撃力も低く。魔力だけは凄まじいも、成長性もないピーキー仕様。彼を強くする鍵は、イベントボス、災禍獣キャスパリーグ、その子供。魔力を食らい盾へと変わるかの獣、ハロルドにとっては唯一無二の相棒。盾になる事は出来る。刃となるのはアレクサンドラとモニカ。 自分だけの戦い方を見つけ出し。 必死に努力を重ねる中で。王位を争う相手である第一王子、カーティスや第二王子、ラファエルの目にも留まり。 だが派閥争いなんぞ真っ平ごめんだと、独自の行動をとり始め、イベントフラグを潰していく。

 

「それならそれで構わない」

 

目の前で明かされていくのは、本来の主人公である妾腹の第四王子、ウィルフレッドの語られなかった悪辣さと傲慢さ。 二人の王子の後ろ盾を得た本来の主人公との激突の時は、迫っている。

 

真っ直ぐに骨太、もがきながらも頑張る姿が眩しいこの作品。 厚めな悪役転生ものを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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