読書感想:ラブコメの悪役に転生した俺は、推しのヒロインと青春を楽しむ

 

 さて、昨今のラノベにおいては悪役転生なるものが一種の人気のテンプレであると言うのは多分、画面の前の読者の皆様もご存じであろう。悪役に転生し、破滅の未来を変えるために努力する中で恋をしていったり無双していったり。テンプレの流れを簡単に記すなら多分そうなるであろう。しかし、悪役が悪役と呼ばれるようになったのに理由がある、ものかもしれぬ。付与されたロールであると言ってしまえばそれまでかもしれぬが。そこに理由というのはあったりすることもあるかもしれぬ。

 

 

しかし、そんな存在に転生してしまえばどうなるのか。当然自分のせいではないのに勝手なレッテルが付与されていたりする訳で。 それを何とか乗り越えていくと言うのも、悪役転生ものの見所であるのかもしれない。この作品もまた、そんな作品なのである。

 

「ここから始めよう。俺は今度こそ上手くやるんだ」

 

何も起きない青春を過ごし、ブラック企業にて精神も体もすり減らす日々を送る名もなき男、モブ。その日々の中で救い、癒しとなっていたのはとあるラブコメ作品。「恋する乙女は伏川くんに恋してる」、通称「ふせこい」。主人公とヒロイン三人が、力を合わせ多数の悪役を撃退しながら絆を深めていく作品。 癒されれど、それは自分にはないもの。その最中、とうとう過労で死んでしまった男は気が付いたら、アニメの不良キャラのような人物に転生しており。一先ず学校に行ってみたら、驚愕の事実が判明する。

 

それは彼は転生していた。それは「ふせこい」の超絶悪役、龍介として。最後は社会的に破滅して終わる、ファンからぶっちぎりで嫌われた悪役。正に二度目の人生ハードモード。それでも決意する。頑張らないと、と。

 

「龍介はやっぱり分かりやすいね?」

 

だが周囲の評価を覆すのはやはり簡単なものではない。植え付けてしまった印象はそう簡単には消えず、何かするだけで奇異の目で見られ、何か起きるだけで濡れ衣を貼られてしまう。 そんな龍介を支えてくれるのは、彼の幼馴染である真白(表紙)。 物語の本筋においては悪役であるも、本当の彼女は龍介に対しまるでわんこのように好意を示してくれる可愛い幼馴染で、彼の何気ない言葉に合わせイメチェンしてくるほどの健気さで。

 

だからこそ決意する。彼女の為にも変わると、彼女と共に青春を、と。主人公の親友キャラとも仲良くなって人間関係を広げ少しずつ頑張る中、判明していくのは「龍介」のパーソナリティ。実は不良になったのは不良漫画の影響という以外にも天然なもので、その根底にはかつて真白を守れなかったと言う後悔が合って。

 

「―――凄いじゃん、進藤」

 

その後悔も乗り越えていく、けれど「龍介」ではない形で。そして確かに成し遂げた成果が、本編主人公の目にもとまり、確かに何かを変えていくのだ。

 

本来の主人公の物語を余所に、自分達だけの青春を作り上げていくこの作品。弾けるように爽やかな青春のお話を見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: ラブコメの悪役に転生した俺は、推しのヒロインと青春を楽しむ (GA文庫) : そらちあき, mmu: 本