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読書感想:声優ラジオのウラオモテ #07 柚日咲めくるは隠しきれない? - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で先を往く半端者の先輩、めくるの本格的な覚醒も終わり、いよいよ夕陽とやすみの合同チーム「オリオン」と乙女率いる「アルフェッカ」の対決が迫ってきている訳であるが、果たして画面の前の読者の皆様はこのままで彼女達は、本当に勝てると思われるであろうか。それは多分、無理な事であろう。何せ「オリオン」は、個性的な問題児の集まりであるのだから。その問題児たちを纏められぬ限り、勝負にもならないのである。
「”オリオン”の子たちには絶対負けないからね!」
「わたしたち、一緒に暮らさない?」
乙女から告げられた宣戦布告、そこから否応なく自覚するのは、対決の時は迫ってきているという事。おりしも対決は九月、その前にあるのは学生にとっては重要な時間である夏休み。だが夕陽こと千佳と、やすみこと由美子にとって重要なのは、受験勉強及びライブに向けての練習。一時休戦し、チームとして纏まる為に。期間限定で千佳が由美子の家に泊まる事となり、奇妙な居候生活は幕を開ける。
「合理的では、ないと思います」
が、しかし。チーム内で纏まろうとしていた「オリオン」に急に灯る不和の黄色信号。その根源は、最年長のメンバーである纏。リーダーとなった千佳よりも半周りほど年上、だが新人の彼女。結衣から助言を受け、彼女と向き合い。見えてくるのは、「声優」という仕事への思い。
声優ではなく、アイドル声優。確かにコンテンツに人気が出れば、太い仕事であるのかもしれない。だが、裏を返せばそこに求められるのは華。それはいつまでも、維持できるものではない。そして始まりが遅かった彼女は、本当はアイドル声優なんてやりたくない。その思いに似たものを抱えているからこそ、千佳もまた思い悩む。
果たして、自分はどうあるべきなのか。その中で見つめ直していくのは、やすみこと由美子の存在。まるで戦友のように、喧々諤々しながらも支え合い。そして時に好敵手として、ぶつかり合う。最初は意識なんてしていなかった彼女は、いつの間にか自分を追い越さんとするほどに羽ばたきだしている。ならば自分も負けていられない。もっともっと、先を目指したい。彼女によって変えられた、この胸の思いと共に。
「これは、許可を取っていないので怒られるかもしれません」
そんな、大切な奴が今、揺らごうとしている。ならば自分に出来るのは何か。それは、その背を蹴飛ばすように支える事。問題児らしい、殻もルールも破る方法で。千佳に支えられ、由美子ことやすみは歌声を響かせる。
その果ての結果、そこにある熱さはどんなものか。それは是非、皆様の目で見届けて欲しい。
シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
声優ラジオのウラオモテ #08 夕陽とやすみは負けられない? (電撃文庫) | 二月 公, さばみぞれ |本 | 通販 | Amazon