読書感想:シェアハウスで再会した元カノが迫ってくる

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は元カノ、元カレと呼ぶであろう存在はあるであろうか。忘れられぬ別れ方をした、という読者様はおられるだろうか。

 

ではここからこの作品の感想を書いていかんとするが、まず初めに試験的な試みとして、この作品についての感想はいつもとは違う書き方をする事をお許しいただきたい。いつもの方が読み易いか、今回のような形の方が読み易いか。コメント欄で宜しければ教えていただきたい次第である。

 

・「いちゃ甘ではなくじれ甘」

 

これは作者であるくろい先生が言われている事であるが、この作品はじれ甘である。何故じれ甘なのか。それはこの作品の主人公である悠士とヒロインである真冬(表紙)が元恋人同士という関係だからである。しかも二人は互いに浮気されたと思い別れてしまった恋人同士なのである。ではこの作品の面白さは何処から来るのか。これより二つの項目に纏めて話していきたい。

 

面白さその一:シェアハウスという舞台

 

 まず初めに面白さの根幹を為しているのはこの作品の舞台であるシェアハウスという舞台である。シェアハウス、それは互いの生活を成り立たせるために独自のルールが必要な場所であり、共同生活という事で仲間であり家族である他人がすぐ側に存在する場所。だが時に二人きりになる事もある。この説明を聞いて、画面の前の読者の皆様は何かを連想されるであろうか。そう、この要素は一部を除いてしまえば「同棲」という恋人同士の生活様式と同じである。そしてこの要素、中々二人きりになれぬという要素が「じれ甘」という甘さを際立たせているのだ。

 

面白さその二:「じれ甘」という甘さ、その本質。

 

 では「じれ甘」とは一体何なのであろうか。勘のいい読者の皆様であればもうお気づきかもしれないが、実はお互い浮気していたというのは誤解と勘違いである。無論そうでなければ、じれ甘なんて成立する事もないのは明白である。

 

ではお互い誤解であると分かった二人の心の中に燃え上がった心は何か。それは「好き」という想い。忘れられなかったお互いへの好意なのである。

 

「なんで、真冬とまた恋人になりたいって思っちゃうんだろうな」

 

どうしようもなく元カノの事が気になる、悠士。

 

「眉毛が微妙だって言いたかっただけ。顔は良いんだし、勿体ないから私に整えさせてよ」

 

別れた筈なのに、気が付けば一緒に過ごせる口実を追ってしまう真冬。

 

お互い今は関係のない筈なのに、相手の事がどうしても気になってしまう。誰かと仲良くしているのを見て、もやもやしてしまう。なのにあと一歩が踏み出せぬ。その一歩を詰めさえすれば。そう思わせてくれるのに。

 

正に一番近くて一番遠い。それが今の悠士と真冬の間に空いた距離なのである。

 

・だからこその面白さ、というお話。

 だからこそもう一度ここから、また初めから。お互い同棲しながらも失敗ばかりでぶつかってばかり。だけどここからなら、きっとやり直せるから。

 

時間は必要だと分かってはいる。だけどそれでも、いけ、そこだと言いたくなってしまう。

 

だからじれったくてこそばゆい、正しく「じれ甘」。そして二人の想いはもうはっきりしている。後は一歩、踏み出すだけ。

 

そんな一見捻っているように見えて王道ど真ん中の甘さが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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