読書感想:隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった

f:id:yuukimasiro:20201206130707j:plain

 

さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はクーデレと聞くとどんな作品の登場人物を想起されるであろうか。クールな彼女が時々デレる、その破壊力に胸を撃ち抜かれたことのある読者様はどれだけおられるであろうか。

 

一人暮らし二年目、料理好きでお世話好き。まるで主夫のようなスキルと性格を持つ少年、夏臣。

 

ある日、彼の一人暮らしする家の隣に一人の少女が引っ越してくる。彼女の名前はユイ(表紙)。由緒正しき英国貴族の娘であり、英国からの留学生である。

 

そんな彼女は高嶺の花。誰に対してもそっけなく、どこか心の壁があり。ついたあだ名は「クーデレラ」。

 

が、しかし。ふとしたきっかけで彼女を助ける事となった夏臣は、誰も知らぬ彼女の本当の姿を知っていく事となる。

 

「こちらのお弁当は、どうして半額なのかと思いまして」

 

弁当半額の理由もわからぬ、それほどまでにちょっとズレた世間知らずで。

 

「ん、夏臣のからあげ大好きだからすっごく楽しみ」

 

美味しいものには目を輝かせる、等身大の可愛さもあったりして。

 

助けたお返しにクッキーを作って貰ったり、二人で紅茶専門店にいってデート的な事をしてみたり、猫が大好きな彼女の笑顔に心奪われたり。

 

まるで秘密の逢瀬を重ねるかのように、だけどすぐ慌てたり赤くなったり。互いに初々しく可愛らしく。そんな秘密の日々の中、お互いしか知らぬ顔が二人の間で増えていく。

 

そしてそんな日々の中、ユイが心の中に抱えていた癒えぬ傷が作り出した心の壁は、気が付かぬ間に夏臣だけが通れる抜け道が出来ていくのである。

 

許されぬ恋の末に生まれた自分の出生を疎み、自分を望まぬ親類に排斥されこの国へと一人流れ着き。

 

不安だらけだった、誰にも頼れなかった。だけど夏臣だけは助けてくれた、自分の側に来てくれた。

 

「代わりにオルガン弾いてくれる? 私のために。それならきっと歌えるから。私の代わりにわがままを言ってくれた、私の大事な人のために」

 

だからこそ。例え彼自身がわがままと嘯いたとしても。彼の為に、少しだけ自分の壁を乗り越えられた。また自分に向き合う事が出来たのだ。

 

嗚呼、何と綺麗な事か。まるで運命のような何かに導かれるかのように出会い、お互いにかっちりと嵌り合うパズルであるかのように、向かい合い少しずつ心の距離を近づかせてゆく。その在り方の何たる綺麗な事か。何たる尊い事か。

 

そう、ここにあるのは正しく特別な青春である。二人だけの日々を積み重ね惹かれ合っていくラブコメである。最近の流行と言ってしまえばそれまでかもしれない、だけど。だからこそ。その丁寧に積み上げられていく様が心に温かさと甘さを齎してくれるのだ。

 

ブコメ好きな読者の皆様、秘密の関係が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった (電撃文庫) | 雪仁, かがちさく |本 | 通販 | Amazon