読書感想:隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった3

f:id:yuukimasiro:20211007223847j:plain

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、今巻の感想を書いていく前に、画面の前の読者の皆様はこの表紙を見て一体どんな展開を想起されるであろうか。ヒロインであるユイの泣き顔、しかしここまで読まれてきた読者様であればその涙は哀しい意味ではないというのは何となく、お察しなのではないだろうか。

 

 

波乱の大波を乗り越え、今すぐに約束の場所へ。前巻の展開を経て既に両片思い、後は一歩踏み出すだけ。もう先に言ってしまおう、そんな二人が一歩踏み出し、読者の誰もが望んだであろう場所へ辿り着き。そしてタイトルの展開の回収がこれ以上ない程鮮やかに果たされるのが今巻なのである。

 

「そうだな、どうするかな・・・・・・」

 

隣にいるのは好きな相手、正直好きでたまらない。だけどお泊りともなると一歩踏み出すのは尻込みしてしまう。いい所まで来ているのに、最後の一歩が踏み出せぬ夏臣とユイ。

 

二人を待ち受け、迫り来るのは夏休み。学生にとっての解放の時。

 

ラヴとライクの同音異義語にもやもやしたり、生徒会のお手伝いをしたり、慶に連れられ訪れた貸し別荘、プライベートビーチでユイの水着を目撃したり。

 

そんな柔らかな日々と周囲の後押しに背を押され、もうどう見ても「普通の友達」には見られない二人は決意し、二人きりの修善寺旅行へと出発する。

 

旅行先でも何も変わらぬ距離感で、思わず夫婦と勘違いされるほどに。穏やかな時間を過ごしたり、景色の写真を交換したり。

 

「だからこの奇跡はきっと、偶然なんかじゃない」

 

 それはまるで奇跡のような時間。だけど、それは偶然なんかじゃない。例え始まりが偶然だとしても、その先を選んだのは自分自身。だからこそ、きっとこんな時間は必然。

 

「俺、ユイのことが好きだ」

 

「私も、夏臣のことが好き」

 

 だからこそ、もう余計な言葉はいらない。飾る言葉は要らない、一言だけあれば良い。英雄の姿を象った星座から幾多の星の雨が祝福か如く降り注ぐ中。最後の一歩は自然と踏み出せた、お互いに。

 

しかし、そこで終わりではない。恋人同士になったけれど、今のまま変わらないままで良いのか。夏臣に貰いっぱなしで良いのか。形を変えたからこその新たな悩みに揺れるユイ。

 

「俺は何があっても絶対にユイのことが好きだ。だからもう怖がらないでいい。ここがユイの居場所だから」

 

その悩みを祓うのは誰の役目か、勿論夏臣だ。不安を取り払うためにもう一度。今度は合鍵と共に夏臣はユイへと気持ちを告げる。ユイの居場所はここだから、だからこそ焦らなくて良いんだと。

 

 

 そう、焦る必要は何処にもない。二人だけの歩き方で、吹き抜ける風と一緒に歩き出せば良い。迷う必要はないのだから。

 

何処までも丁寧に、真っ直ぐに。積み重ねその上に結実させる。だからこそ無添加と言わんばかりに余計な雑味が無いからこそ。どこまでも染み入るかのように、この甘さと温かさは心を打つのだ。だからこそ、もうこの作品は「ラブコメ」ではなく、「ラブロマンス」と呼んでも良いかもしれない。

 

願わくば、もっと先までこの作品が続く事を。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった3 (電撃文庫) | 雪仁, かがちさく |本 | 通販 | Amazon