読書感想:時間泥棒ちゃんはドキドキさせたい 俺の夏休みをかけた恋愛心理戦

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は自分がふと気が付いたら思ったより時間が進んでいた経験はあられるであろうか。それは極度の集中をしていた時に起こる事かもしれない。だがしかし、もしかすると時間を誰かに盗まれているのかもしれない。そうだとしたら、貴方はどうするだろうか。

 

一学期も終わり夏休みが始まると言うとある日。何も起こらない退屈な日常に飽き飽きし何かが起きる事を願っていた平凡な少年、颯(表紙中央付近右)。彼は突然、クラスのアイドルである少女、白雪からまさかの告白を受ける。

 

普通であれば、ここから新しい日常が始まる筈な始まりの合図。だがしかし、その告白の次の瞬間。何故か颯の周りの時間は進み、夏休みが終わっていた。数えて四十日と二十時間、彼の時間はごっそりと進み消失していたのである。

 

気が付けば白雪に三回も時間を盗まれ。憤慨し時間を返せと迫る颯。

 

「それなら加嶋くん、わたしとゲームをしましょう。あなたの夏休みをかけて」

 

そんな彼へと、白雪は携帯型第四次元物質維持装置、通称、人工林檎を用いたゲームを持ち掛ける。

 

ルールは只一つ、相手の心拍数を上げる事。もし上げた瞬間に人工林檎を使えば、時間を返してあげるという事。

 

そのゲームを持ち掛けられ承諾し、心理戦の為にデートへと出かけ。彼女の掌の上で転がされながらも一矢報いようと空回りし。

 

そんな中、颯は一つの疑念へと辿り着く。それはどうも、白雪の手が込み過ぎているという事。

 

そして勝負の果て、颯が演出した奇跡の元で、何故白雪が時間泥棒などどいうものに手を染めていたのかの理由は判明する。

 

その真実はあまりにも痛ましく。何故なら彼女の時間は一日を残して何もなかった。だからこそ、積み重ねていけるだけの時間がないからこそ、彼女は時間を何よりも求めた。

 

だけど、そんな行いは許されぬ事。本来バレてしまえば、問答無用で消されたとしても文句の言えぬ事。

 

「―――おまえは絶対に消させない。俺の青春には藤ノ宮が必要なんだ」

 

だが。颯はそれがどうしたと切り捨て、迫る危機があろうとも本気で口にする。

 

その理由は、彼女だけが自分がいかに愚かだったか気付かせてくれたから。鈍足で進ませていた時を奪ってくれた、だからこそ知れたことがあるから。

 

一度しかない青春の時間を巡り、異能と心理戦がぶつかり合うこの作品。

 

昨今の甘いラブコメとは一味違い、どこか不思議な一面を持っているが、それが唯一無二の面白さを出しているのは確かなのである。

 

可愛いヒロインにどきどきしたい読者様、異能が絡んだ青春を見てみたい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

時間泥棒ちゃんはドキドキさせたい 俺の夏休みをかけた恋愛心理戦 (電撃文庫) | ミサキナギ, うなさか |本 | 通販 | Amazon