前巻感想はこちら↓
読書感想:豚のレバーは加熱しろ(2回目) - 読樹庵 (hatenablog.com)
この二人 今まで一番 もどかしい
・・・失礼、つい本音が出てしまいました。
もどかしいと言うべきか、それとも何と言うべきか。包み隠さず言うなれば面倒くさいとでも言ってしまえば正解なのだろうか。
「私は幸せです。豚さんと一緒にいられるなら」
封印していた記憶を取り戻し、豚への想いを取り戻したジェス。だがしかし、彼女の心は我等が主人公である豚を見ていながら、本当の意味で見ていない。幸せを願いながら、自分が幸せにするのではなく、誰かと幸せになってほしいと願い何処か線を引き。
それは我等が豚も同じである。旅の途上でジェスと力を合わせた新技を開発したりと絆を深めながらも。彼女の視線に心ときめかせたりしながらも。彼女とは生きる世界が違うと線を引き、一歩引いて構えてしまう。
確かに変わったものがある。だけど変わる事は良い事ばかりではない。何度目かのジェスと、仲間達との旅。だがしかし、一度喪失を経ての新たな旅は何処か切なさを孕んだ空気を持っていて。
だからこそ、彼等はすれ違ってしまったのかもしれない。本当の意味で手段と目的が分かっていなかったのかもしれない。
「たった一つの大切なことを、君たちは絶対に忘れてはいけない」
「愛する者は死ぬ気で守れ。だが人の愛するものを奪おうとするな」
旅の終幕、大切な者を守り死していく男が遺した一つの言葉。だが、本当にその言葉に込められた思いは、ジェスの、豚の心に届いたのか。
地球とメステリアの絆は不安定。そしてもう時間は残されていない。ジェスはもう、きっと一人でも歩いていける。
そう信じ離れていこうとする豚。だがその行いは、人の愛するものを奪おうとすることであると気付いていないのか。願うからこそ、自分ではなく。それは果たして本当に正しい選択肢なのか。
ここまで読まれた画面の前の読者の皆様はもうお分かりであろうか。今巻は前巻よりもシリアスである。そして取り戻した筈の絆がすれ違う、どこか切なくて痛ましさが溢れている巻なのである。
容赦なく終わりを迎えようとする二人の旅の物語。一方的に始まった物語は再び、一方的な終わりを迎えんとしようとする。果たして、本当にこの旅が終わるとしたら、二人の絆はどうなってしまうのか。
前巻を楽しまれた読者様、どうか覚悟を決めて読んでみてほしい。今巻はきっと、心を抉られる筈である。