読書感想:豚のレバーは加熱しろ(7回目)

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:豚のレバーは加熱しろ(6回目) - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、もはや断るまでもないであろうが前巻までのストーリーを把握されている読者様がこの巻の感想を開いているものとして、今巻の感想を書いていくわけであるが。前巻の事件、その裏に隠れていたのは真の「十字の処刑人」の思惑、その果てにあるのは、王朝と解放軍の決別という、今まで共に歩んできた者達の決別。つまり、もうお分かりであろう。ジェス及び豚は、解放軍と王朝の狭間、難しい立場に立たされてしまったのである。どちらかを立てれば、もう片方に裏切りとみなされる。そんな難しい状況の中、動かねばならない。

 

 

動き方によっては、味方にも反逆者にもなり得る。そして、豚に残された時間はあと僅か。世界が交じり合う中で、全てを丸く収められる可能性はどんどんと狭まっていく。そして豚に出来る事はあまりにも少なく、状況はどんどんと突き進み。シュラヴィスに会えぬまま、シュラヴィスから世界を何とかする鍵としてセレスを殺すのが正しい事を知らされる。

 

無論、それを許すわけにはいかぬ。自分の死を望むセレスに合流し、何とか彼女の気持ちを説き伏せ。 ジェスと共に、セレスが生き延びる道を探すために。何とか彼女を生かす道を探し、なるべく時間を稼ぎながら逃走の道を選ぶ事となる。

 

事態を打開する鍵となるのは、何か。それは王朝の祖であるヴァティスの夫となった、豚たちの世界とは違う異世界から来た魔法使いであり、文明が滅んだ西の荒野へと消えた者。僅かな可能性を信じ、廃城へと逃げ延びた先で城主であるグランと、従者であるエザリスに助けられ。その城でヒントである「死の街」、ヘルデの情報を得。彼等に逃がされながらも何とか、ヘルデへと旅立つ。

 

逃避行の先、待っていたのはかつての因縁の相手であるシト。彼もまた何かを探すかのようにこの街へ辿り着き。彼の案内の元、ルタの痕跡が残るとある場所を目指していく。

 

 ではここから巡るのは何か。それは生き延びる可能性を前に、ノットという愛する者へ想いを巡らせるセレスの思い。そして、とある女性への思いと忠義を今でも持ち続けるシトの、純粋なる忠愛。

 

「とても悪いことをたくさんしました」

 

一つの愛は幸福を迎え、もう一つは悲しい結末を迎え。そして全てを見守ったジェスと豚に示されるルタのメッセージ。それは世界を守るためには悲しい決断をしなければならぬという事。世界を守る為には、豚の命を賭けねばならぬという事。

 

ハッピーエンドしか許容しない、そう言うのならこの選択の中でどうハッピーエンドを見出すのか。いよいよ大詰めの筈の中、何を選ぶのか。

 

次巻、期待したい。

 

豚のレバーは加熱しろ(7回目) (電撃文庫) | 逆井 卓馬, 遠坂 あさぎ |本 | 通販 | Amazon