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読書感想:豚のレバーは加熱しろ(4回目) - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれた読者様は一匹の豚がやっと気付いた思い、彼にとってのヒロインであるジェスとずっと旅をしたいと言う思いについてはもうご存じであるだろうし、改めて振り返る必要もないであろう。ずっと旅をしたい、もっとどこまでも一緒にいたい。だからこそ、もう進むしかないのである。非力な身であるけれど、それでももう関わらないと言う選択肢は取れないのだ。
旅を続けるために必要な事、それは闇躍の術師をこらしめ、王朝を取り戻すこと。後顧の憂いを断たなければ、本当の意味で前に進めるわけではない。
その為に必要となるのは、起死回生の切り札。そして力となってくれる、囚われの王であるマーキス。
そんな、逆転へ向けての鍵は一体どこにあるのか。その居場所、それは「深世界」。初代王女が遺した文献の中にその手掛かりを残す、この世の裏側。多くの人々の願いによって成り立つ、願望が何でも成り立つ不思議な世界。
解放軍の手勢と別れ、実行する二面同時作戦。残された時間は残り僅か、こちらの手勢はノットのみという少数精鋭。
僅かな仲間と共に飛び込んだ深世界。そこで待っているのは何でもありだからこその笑いもあるコメディ的展開か。 否、そんな展開に身をやつしている時間はない。誰かの願望というのは決して生者だけではないのだから。
何でもありな世界を旅する中、出会っていくのは大切な者への想いを残した者達。その者達からの思いを受け取り、目撃していくのは王家の過去、そこに秘められている真実。
王との決着の時が迫る中、決着を付けなければならぬ者がいる。しかしその決着をつけるべき因縁の持ち主は、ジェスでも豚でもない。
その持ち主、それはノット。戦いの中を駆け抜ける中、明らかになるのは彼の思い。ジェスの姉、イースへの消えぬ思い。
思いを残し、また会いたいと願う彼。そんな彼の目の前に、イースは現れ再会を果たし。
「大好きでしたよ」
「どんなときも、生きることを選ぶのです。あなたを待つ人がいる世界で」
けれど、彼女は自身の思いを、願いを伝え、ノットの背を押し送り出す。幸せを願うからこそ、どうか生きてほしいと。どうか、この深世界においても支えてくれるほどの願いを持つ者と共に生きてほしいと。
二人の姿は、もしかしたら豚とジェスにもあり得た可能性だったのかもしれない。何処かでボタンを掛け違えていれば、彼等の立ち位置にいたのは豚とジェスだったのかもしれない。
だが、未だ波乱の種は残り次々と芽吹きだす。現実世界で目を覚ますとある少女、そして融合を始めようとするふたつの世界。
シリアスで切なく、心突き刺す今巻。
シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
豚のレバーは加熱しろ(5回目) (電撃文庫) | 逆井 卓馬, 遠坂 あさぎ |本 | 通販 | Amazon