読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々4

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前巻感想はこちら↓

読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

さぁーて(以下二回目につきマンネリを危惧したのでイカ省略)。そんな微妙に滑っているであろう寸劇はいったん脇にでも置いておいて、ひきこもりたいけれど最強の力に邪魔をされる我等が主人公、テラコマリ。全ての種族を巻き込んだ大戦も一段落し、ようやく落ち着いて休めてひきこもれる・・・訳もなく。やっぱりどうしたって引きこもれないのがこのシリーズな訳である。

 

戦いも小休止、かと思えば前巻で盟友となった遥か東の国、天照楽土に属するカルラ(表紙左)に誘われ、外交使節として赴く事になるコマリ。

 

辿り着いたは桜花舞い踊る雅かつ風流な和の国。そんないつもとは違う日々の中、とりあえずのんびり・・・という訳にもいかず。奇しくも天照楽土は今、国の長である大神の後継者を決める天舞祭というお祭りで盛り上がっていた。

 

そうは言っても他国の争いである。外交使節として訪ねてきている自分には関係が無い、筈だった。

 

だが、そうは問屋が卸さないとばかりにとある事件の嫌疑をかけられ挙句の果てに、天舞祭の戦いの中へカルラ陣営の一員として巻き込まれる事になってしまって。

 

 コマリにとってこの戦いは避けられる戦いの筈だった。関わらなくても良い筈だった。しかし彼女は目撃してしまった。カルラという一人の少女の内心、そして夢を。

 

天神として生きる事を求められ、だけど心は戦いを拒む。自分には誰にも譲れぬ夢、お菓子の店を出すと言う夢があると心が叫ぶ。

 

それはまるで、何処か自分のように。今まで生きてきた境遇は違えど、自分とカルラは何処か似ていた。

 

 だからこそ今、見逃す事は出来ない。ならばこそ、コマリは今、自分の足で戦場へと向かい、カルラの手を引き勝利の為に駆ける。あの今まで受動的であったコマリが、初めて自分の意思で。

 

「・・・・・・コマリさん。私に力を貸していただけませんか。覚悟ができている、といったら嘘になるかもしれません。でも・・・・・私は大神になって天照楽土のことをもっと知りたい。だから、お願いです。どうか私と一緒に戦ってください」

 

その姿に優しく背を押されるかのように、カルラもまた自らの意思で立ち上がる。

 

「かるらのゆめを、ばかにした」

 

そしてカルラの夢を笑った賊へと繰り出されるは新たなる力。流れる時を味方にする、正に最強無敵の一撃。

 

今までとは違う行動、芽生え始める力への自覚。そして動き出す、テロリストたちの魔の手。

 

いよいよここから、本番とばかりに動き出す今巻。

 

だからこそ、きっとここから全ては始まる。その様を是非、見届けてほしい。

 

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読書感想:俺とコイツの推しはサイコーにカワイイ

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斗和キセキ様、おめがシスターズ様。さてこの二組に共通する要素は何であるかという問題を出してみても、Vtuberという答えがすぐに導き出されるであろう。画面の前の読者の皆様であればきっとそうだと信じている。では画面の前の読者の皆様は推しのVtuberの方はおられるであろうか。その人への愛ならだれにも負けないと自負している推しの方はおられるであろうか。

 

 高校一年生、控え目な性格で周りから目立たず、どちらかと言えば孤立気味な少年、アズマ(表紙中央奥)。彼の幼馴染であり、露出を嫌い気弱な性格ゆえに周りから孤立気味な少女、ロコ(表紙右)。

 

しかし二人には、自分が置かれた状況なんてどこ吹く風と言わんばかりに夢中になれる存在があった。その名は∞ギンガ。動画サイト上でまだまだ未熟ながらも必死に活動する電脳アイドルである。

 

そんな電脳アイドルの中身の少女の名はアゲハ(表紙左)。アズマとロコのもう一人の幼馴染であり、クールで無口な性格ゆえに周りから孤立気味な少女である。

 

だがしかし、彼女は今夢を叶える為に電脳アイドルという道を邁進していた、故に気にもしていなかった。

 

お気づきであろうか、画面の前の読者の皆様。アズマ、ロコ、アゲハ。三人に共通する要素を。それは「孤独」であるという事。それぞれの性格ゆえに周りから浮いていて、だけどそれでも気にしていない同士。だが三人は幼馴染であるが、いつしかすれ違い離ればなれとなってしまった者達だ。

 

だけど今、お互いに∞ギンガの中身を知っている同士という事でアズマとロコは繋がり、その様子を見たアゲハは二人が愛し合っていると勘違いしてしまう。

 

その勘違いをこれでもかと、だが息ぴったりに否定しながら推し活動に励む二人は互いの愛をさらけ出しぶつけ合い、まるで相乗効果であるかのようにお互いの愛を深めていく。

 

だが、足りない。この輪には何かが足りない。それは誰か。言うまでもないだろう、足りないのはアゲハである。

 

 

一人じゃ寂しいから二人で手を繋ぎ、二人じゃ寂しいから三人で手を繋ぐ。

 

愛するだけじゃ進めない。本当の意味で繋がって、循環させる事が出来たのなら、きっと本当の意味で進める。

 

「二人とも大好き。あなたたちがいてくれたから、私は電脳アイドルとしてここまでこられた」

 

どちらの愛が好きとかじゃない。二人の愛が好き、アズマとロコ、二人の事が大好き。だからこそ、二人が背を押してくれるからこそ何処までも進める。

 

 この作品は、すれ違っていた三人の幼馴染が現実と電脳が交差する世界で、また友達としてやり直していく作品である。そしてファンとアイドルが一体となり、「アイドル」を作り上げていく作品なのである。

 

すれ違い、ぶつかり合い、向き合って、分かり合う。そんな青臭くて粗削りで、だけど純粋で瑞々しいこの青春を尊いと言わずして、何を尊いと言えば良いのだろうか?

 

絆を結ぶ尊さが好きな読者様、青春と友情が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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読書感想:貴サークルは"救世主"に配置されました

 

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徹夜待機(勿論ルール違反なので止めましょう)、始発ダッシュ(危険ですので競歩レベルで留めましょう)。様々な風物詩がある一年に二度のオタクにとっての一大イベント、それは画面の前の読者の皆様はご存じであろうか。そう、コミックマーケット、通称コミケである。オタク達の汗と涙と熱気が飛び交う正に戦場である。

 

が、しかし。既にご存じであるかもしれないがコミケは昨今の情勢下においては勿論開催できるわけもなく、コミケの会場として名高い東京ビッグサイトは、雑草に彩られたゴーストタウンと化してしまっている。

 

その様とコミケがない事に寂しさを覚える画面の前の読者の皆様も一定数おられるだろう。

 

ならば、そんな貴方にはこの作品がよき処方箋となるのではないだろうか。何故ならこの作品には、同人作家という業の深い者達の生き様と生き方、そして熱さがこれでもかと詰め込まれているからである。

 

 コミケに二年間当選しスペースを貰ってはいるものの、二年間の参加の中で売り上げは六部。そんなうだつが上がらない弱小同人作家、ナイト(表紙左奥)。

 

そんな彼の元へ、謎の女子高生、ヒメ(表紙右)が唐突に現れる。そして彼女は声高らかに告げる、貴方こそがこの世界を守れる唯一の救世主であると。

 

同人誌百部を売り上げなければ、ナイトの数少ないファンの一人の中で息づく魔王が目覚め、世界が滅んでしまう。だからこそ今年は、同人誌百部を完売させなければならないと。

 

傍から聞いていればわけがわからないよと、まるで某インキュベーターが如く言いたくなるような状況に巻き込まれ、否応なくナイトは百部売り上げを目指す事となってしまう。

 

「一日三枚イラストを描いてください」、「生きた線が引けていません」

 

時にヒメに容赦なく駄目だしをされ、背を蹴飛ばされる勢いで叱咤激励され。

 

「もちろんです。そのために作ったんですから」

 

「自信を持って下さい。きっと売れます」

 

時に手料理を振る舞われたり、時に優しく励まされたり。

 

 厄介な奴から絡まれたり、厳しさに心折れそうになったり。だけどそれでも、描く手は止まらない、創作は止められない。それは何故か。

 

それは何よりも「好き」だから。好きという思い、伝えたい思いがあるからである。

 

全ては自己責任、だがそれ故にどこまでも自由。そして商売ではない、だからこそ何のしがらみもない。だから自分の好きを何処までも表現できるのだ。

 

「ここは、地獄なんかじゃない。だから、私は負けません! あの場所を壊させはしません!」

 

この戦場が如き世界は確かに地獄に見える。だがそこには誰かの好きという熱意がこれでもかと溢れている。だからこそこの世界には守るべき理由がある。

 

同人作家という業の深い世界を見てみたい読者様、創作への熱意迸る作品が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

貴サークルは"救世主"に配置されました (GA文庫) | 小田一文, 肋兵器 |本 | 通販 | Amazon

 

 



読書雑記:発売日前恒例、新刊紹介なお話。ガガガ文庫及び富士見ファンタジア文庫編のお話。

夜分遅くにこんばんは、夜更かししている読者様はどれほどおられますでしょうか。私は愛猫と寝たいのですが愛猫が元気いっぱいに遊び回っているのでまだ寝れません、真白優樹です。では愛猫が落ち着くのを待ちながら、折角なので来週発売の新刊についてお話したいと思います。

 

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魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿

著:紫大悟先生 絵:クレタ先生

 

ではまずはファンタジア文庫の新刊からの紹介です。まずはこちら。第33回ファンタジア大賞で栄えある大賞を受賞された作品となります。あらすじから見るとかなりごった煮の要素が強そうですが、大賞を絶賛と共に受賞されたという事でどんなレベルの高い作品であるのか。楽しみにしたいと思います。

 

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魔女と始める神への逆襲 道化の魔女と裏切られた少年 著:水原みずき先生 絵:紅緒先生

 

二作品目はこちら。こちらは金賞を受賞された作品となります。どうやら衝撃の真実が待っているとの事ですが、どんな衝撃の事実が来るのか。どんでん返しを楽しみにしたいと思います。

 

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母親がエロラノベ大賞受賞して人生詰んだ せめて息子のラブコメにまざらないでください 著:夏色青空先生 絵:米白粕先生

 

三作品目はこちら。こちらは銀賞を受賞された作品だそうです。ファンタジア文庫でお母さんと聞くと、某通常攻撃なお母さんを思い出すのは私だけでしょうか(苦笑)。そこはともかく、今度はどんな強力なお母さんが来るのか。その力を楽しみにしたいと思います。

 

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シェアハウスで再会した元カノが迫ってくる 著:くろい先生 絵:にゅむ先生

 

四作品目はこちら。こちらはファンタジア文庫でかつて先輩との同棲を題材にされたラブコメを手掛けられていたくろい先生の新作となります。今度の舞台はシェアハウス、そしてイチャ甘ではなくじれ甘ラブコメとの事で、どんなラブコメとなるのか。楽しみです。

 

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転生王女と天才令嬢の魔法革命3 著:鴉ぴえろ先生 絵:きさらぎゆり先生

 

五作品目はこちら。このブログでも記事にしてきたシリーズの続刊となります。今巻は何やら重要な転機となる巻との事で、果たして彼女達がどんな決断を下すのか。そこに期待したいと思います。

 

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剣と魔法の税金対策 著:SOW先生 絵:三弥カズトモ先生

 

ではここよりはガガガ文庫の紹介です。まずはこちら。様々なレーベルで独特の世界観の作品を刊行されておりますSOW先生の新作となります。ファンタジー世界で税金対策とは果たして何ぞや? 独自の着眼点から始まるファンタジー、期待が止まりません。

 

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育ちざかりの教え子がやけにエモい3 著:鈴木大輔先生 絵:DSマイル先生

 

二作品目はこちら。このブログで記事として書き、追ってきたシリーズの最新刊です。今度は何やら変化と成長の巻との事で、どんな展開が待っているのか。変わらず楽しみです。

 

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僕を成り上がらせようとする最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場2 著:赤城大空先生 絵:タジマ粒子先生

 

では最後、三作品目はこちら。このブログで記事にいたしました作品の続刊となります。今度は何やらあらすじの時点で厄介事の気配がしますが、どんな騒動と成長が待っているのか。楽しみにしたいと思います。

 

以上、期待の9作品でした。ではまた来週になりましたら読んでいきます。

読書感想:カンスト村のご隠居デーモンさん ~辺境の大鍛冶師~

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。例えばファンタジーの世界において英雄と呼ばれるような功績を為した人物達は、果たして本当の意味で幸せであると思われるだろうか。私達の現実世界でも、例えば会社勤めならば出世する度に名誉と共に、色々な責任や柵が増えていくものである。では、もしそれを最高まで、それこそカンストするまで極めてしまったのならば、それはきっと生きづらい人生になってしまうのではないだろうか。

 

ステータスも魔法も存在する、とある異世界。その何処かにある王国の王女であり、剣の皇女とも呼ばれる凄腕の剣豪、アルブレア。彼女は王宮付きの吟遊詩人、ギルメウスより唆される。この国の端には大悪魔が住む村がある、悪魔祓いこそは騎士の誉れであると。

 

だがしかし、そこに住んでいたのは大悪魔であっても悪い悪魔ではなかった。その大悪魔の名は「公爵」。(表紙左)。心優しき隠居の公爵であり名だたる武器を手掛けた鍛冶師であり、そして伝説に名を残した救国の国父。彼の元に仕える目つきの悪いちびっこメイド、ヨート(表紙右)。彼女もまた伝説に名を残す、強大無比なる魔剣であった。

 

そう、かの村は只の村ではなかった。老若男女、様々な人種が入り乱れている事だけが特徴に見えるその村は、実は様々な伝説に名を残した英雄達の隠れ里。過ぎた力を持ち人の輪に入れず放浪した英雄達が手に入れた終の棲家だったのである。

 

酸いも甘いも知り、人々の営みも、移りゆく心もこれでもかと目撃してきた。だからこそここしかない。同じ痛みを知るからこそ分かり合える。そして人生を何処までも味わってきたからこそ、皆何処か達観し、老成している。

 

そんな温かく優しい村で、公爵達に歓迎され村の本質を目撃し。騎士であろうと己を縛り付けていたアルブレアは、迷いを振り切り、本当の意味での騎士として、誇り高き英雄、その生まれたての一人として目覚めていく。

 

「私を突き動かすのは唯一つ。騎士の誓いだ。無辜の命を護る、ただそれだけのこと!」

 

例えどれほど傷を背負おうと、その背に守るものあらば幾度でも立ち上がり、決して折れず悪を断つ。その姿、正に英雄。そう呼ばずして何と呼べばよいのか。

 

正に春の陽だまりのように温かく、優しく。それだけではなく教え導く熱さと目覚め成長し、雄々しく戦い新たなる英雄となっていく熱さも共に。

 

そんな面白さがあるこの作品を、面白いと言わずして何と言えば良いのか。

 

独特の温かさが好きな読者様、王道の熱さ溢れるファンタジーが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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読書感想:神角技巧と11人の破壊者 上 破壊の章

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。鎌池和馬先生と言えば、貴方に取っての代表作を聞かれれば一体何と答えられるだろうか。無論、その答えは読者の皆様それぞれによって異なるだろう。どれしもが代表作であると言える程に知名度が高く、それほどに刊行されているシリーズ作品が多いからである。

 

ではこの作品の感想を書いていく前に、まず初めに予め述べておくと、この作品は三か月連続刊行が決定している、言わば三部作の作品の序章である。そして、とあるゲームプロジェクトのシナリオを小説として刊行したものであるらしい。

 

ではこの作品はどんな作品であるのか。その答えは只一つ、超常的な力を持つ巨大な兵器同士がぶつかり合う、最強対最強のバトルという事である。

 

とある異世界には十人の超常的な力を振るう者達がいた。その力の名は「神角技巧」。人類の技術や文明でも対抗不可能な生命体、「邪神」の角を取り込み核として創り出された、絶対的な兵器。

 

破壊も創造も自由自在。そんな無敵な力を受け継いだ一人の少年がいた。彼の名はミヤビ(表紙右下)。辺境の村の木こり見習である彼は神角技巧とその所有者同士の戦いに巻き込まれ、所有者の一人であったメビウスという男から、神角技巧を譲り受ける事となる。

 

彼が受け継ぎし神角技巧の名は「ルシフェルホーン」。悠々と無人で空を往く、自由自在に作り出した砲撃を撃ちだす、強大無比なる爆撃機

 

その力を手にしたミヤビの元へ迫る喫緊の課題、巨大な商会の一人娘であるセリーナ。彼女が操縦する神角技巧、巨大装甲列車シュバルツシュッツェ。

 

そして、ミヤビが戦わなければいけぬ敵は十人の所有者の中にいる「十一人目」。一都市を消滅させる程の威力を持つ特殊な爆弾を用い、気紛れに混沌と被害を齎す謎の敵。

 

その脅威を止める為、錬金術を使いこなすエルフ、アリシア(表紙左)、唯一確認されている邪神の幼体のアルマ(アリシアの手の中)、アルマの監視の為に派遣された役人、ヘレナ(表紙右上)と共に旅に出るミヤビ。

 

十一人目を追い旅をするミヤビの前に立ち塞がるは、何れも強大無比なる神角技巧とその所有者。ぶつかり合うしかない状況は続く、故にこそぶつかり合う。

 

セリーナとシュバルツシュッツェと激突したかと思えば、雪の国を往く、巨大なる騎士の槍とその所有者と激突する事となったり。

 

そして戦いの中、只の少年であったミヤビは徐々に成長し、「力の意味」を手に入れる。何故壊し、創造するのか。その力を何のために振るうのか、という意味を。

 

「お前は悪くない。今までみんなの命令を聞いてくれてありがとう、本当によく頑張ったな」

 

神角技巧を破壊する度、その力と宿されていた思いを受け継ぎ、彼は進んでいくのだ。

 

気持ちの良い熱血系主人公が好きな読者様、巨大な力同士のぶつかり合う戦いが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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読書感想:転生魔王の大誤算2~有能魔王軍の世界征服最短ルート

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前巻感想はこちら↓

読書感想:転生魔王の大誤算 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

さて、この巻の感想を書いていく前に画面の前の読者の皆様に一つ、問いを投げかけてみんとする。王という者、為政者という人種に取って重要な要素とは何であろうか。臣下の民に差し向ける為の優しさであろうか。否、それだけではないと貴方は思われるだろうか。優しいだけではなく時に厳しく。自らの臣下に害を為そうとする敵を容赦なく叩き潰す苛烈さと冷酷さも時には必要ではないだろうか。

 

部下にどんどん持ち上げられ押し上げられ、最早逃げる事もままならぬ。故に始まる、魔王ケンゴ―による人界侵略作戦。その目標となった、魔族の領土にほど近い国、ベクター

 

「それがなぜ、こんな惨状になっておるのだ!」

 

が、しかし。怠惰の魔将であるベル原に無血で、苦痛を与えず、天寿を全うさせてやれと一見すると無理難題な形、ケンゴ―本人からすれば長期的な作戦を命じてみれば、ベル原の十八番の睡眠魔法による作戦であっさりと王都は陥落し。

 

そんなツッコミから始まる今巻は、占領政策のお話であり、戦争に付き物の占領、そして占領地の統治に関するお話である。

 

一先ず人々を眠りから叩き起こし、大衆の心に訴えかけたり無料の診療所を開いてみたり。前世が小市民であるからこその平和的、最早占領地の人々に媚びるかのような政策を打ち出すケンゴ―。

 

だが、そんな彼の政策を邪魔する者がいた、よりにもよって獅子身中の虫という形で。彼の邪魔として秘密裡に立ち塞がるのは強欲の魔将、マモ代である。

 

強欲であるがゆえに、陛下の全てが欲しい。その地位ですらも。だが博打は趣味じゃない。だから陛下に副作用のある霊薬を飲ませたり、セレモニーを邪魔したり、民衆を扇動したりと様々な手を打ち、迂遠で壮大な策を仕掛けてゆく。

 

しかし、正に策士策に溺れるとはこの事か。マモ代も想定していなかったレベルで、ケンゴ―という希望は民衆にとって魅力的であり。故に彼女の知らぬ間に計画は崩れ、彼女は魔族殺しに特化した天使を相手取り、戦う事となってしまう。

 

「無論、おまえのような忠臣を喪うのは、余の損失だからだ」

 

だがしかし。無論、臣下の危機を黙って見過ごす魔王に非ず。

 

「よくわかった」

 

その胸に宿るは天帝への怒りと天界との決別の思い。臣下を守り、敵を討つ。魔王という立場への自覚の第一歩。

 

前巻が世界観紹介と舞台づくりであるのなら、今巻からが本当の意味での始まり。魔将達それぞれに光を当てつつ、ケンゴ―の成長を描きだすのが今巻である。笑えて燃えられる、そんな面白さが更に高まるのが今巻なのである。

 

前巻を楽しまれた読者様、笑えて心熱くなるファンタジーが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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