
前巻感想はこちら↓
さて、前巻で後ろ向きなドライな立ち位置から前を向き始めた静一郎。澄花との関係は、まだ名前はないけれど保留したまま。しかしお互い、何となく思いは気づいている、ともいえる。そんなもどかしい状態からのアフターストーリーである今巻は、何が起きるのかと言うと。様々な騒動、立ち塞がる問題を二人で乗り越えていく巻なのだ。
「進学できないかってうちのお父さんに相談しない?」
雪の季節を越えて春、もどかしい関係の中、配られたのは進路調査の用紙。当然、静一郎の進路はスミレへの就職一択。無論、このお店を守りたいから。駅前に進出してきた大手チェーン店にも負けない為にも。だが澄花はそれを諫める、なにがあるかわからないからと。
「スミレはお前の選択肢の一つでしかないんだ」
更に、現在の保護者であるおじさんも言う、選択肢の一つに囚われるなと。 静一郎の不安である進学費用の問題、それにある程度解決させるために持ち掛けられたのは、蒸発した父親を探すという事。スイスでの目撃情報があった、という事でおじさんが調べてくれることに。
「・・・・・・ぜんぶ、あんたのせいよ」
一先ず進学費用の問題は置いて置く中、静一郎へと向けられるのは身勝手な逆恨みの敵意。澄花の親友であるつくしが、澄花の事を気にしすぎて成績を落としたのは静一郎のせいだと言ってきてぶつかり合う事となり。澄花とも仲が拗れ、白須賀さんにこてんぱんに言い負かされて、一先ずは矛を収めることに。
「俺はまだ、澄花さんの本当の気持ちを聞いてない」
だけど神様は割と残酷、まだまだ試練を課したいのか。おじさんから伝えられたのは、かつて訪れたスイスの街で、父親らしき男が五年前に病死、日本で言う無縁仏として埋葬されたという話。お金のあてが無くなる中、スミレを襲う経営問題。諦めようとする澄花、諦めたくない静一郎。最後まで足掻くべく、賭けるのは珈琲。新たな珈琲を生み出し、売り上げアップに挑戦する事に。
「澄花のこと、頼むわよ」
波乱万丈、次々襲い来る問題。一つずつ、乗り越えて。そんな中、澄花の思いを知ったつくしは敵わないな、と思って静一郎に託して。
「好きです」
「ずっとあなたが好きです」
ようやく踏み出し、心を伝え合って。
「恋人みたいだな」
「恋人だよ」
降り積もった雪も解けて、吹き荒れる花も駆け抜けて、また新たな季節へと歩いて行く中。二人寄り添って歩いて行くのである、今度は恋人同士として。
穏やかで温かな、そんな思い吹き荒れる今巻。前巻と合わせて皆様も是非。