
前巻感想はこちら↓
さてさて、前巻にてそれぞれの因縁の相手、そして自身の辿っていく道の先にいたかもしれない前任者との闘い、一つの決戦を乗り越えたノーマンと「アンロウ」の面々であるが。やはりまだ明かされていないことがあるのは画面の前の読者の皆様もご存じではないだろうか。それこそはビギンズナイト、彼らの始まり。そこに何があったのか。それを語るのが今巻である。
「解離性の記憶障害、それによる感情の欠落ですわ」
元々は軍医の名家の出身であったノーマン。誰にも内緒で年齢を偽り、戦場に出てきたのは偏に、完璧な年上の婚約者であるアイリスに釣り合えるようになりたいから。戦場で何とか生き抜くある日、胸に風穴を開けられ何とか生還し。だがその代償に、彼は我々のよく知るノーマンになっていた。
「お前はこれから、バルディウムに来て、私の仕事を手伝いなさい」
リハビリが始まった、かと思いきや突然やってきた謎の老婆、マスター・シンによる戦闘訓練というぶっ飛んだリハビリとなり。やってきた姉、スフィアに連れられてやってきたのは、ご存じバルディウム。この時はまだ幹部であったスフィアの下で働くことになり、アンロウの対処の仕事をすることに。
振られたのは四つの事件。エヴァーグレイス学園で起きている集団錯乱事件、最近ならずものを相手に過剰な暴力をふるっている女の噂、ヘルカート通りにはびこる魔物の噂。そしてクレセント通りのアパートを中心に発生したのは、集団発狂事件。
「ボクが愉しめるような、そんな選択をしてみてね?」
「お前が、私に正義を与えてくれ・・・・・・!」
「どうか、人なのか獣なのかわからない私なんかを、お側においてください」
「たすけて、ください」
その中、出会っていくのはまだアンロウになったばかりの四人。クラレスではなく、フェリシティの、ロンズデーではなくロザリンドの、エルティールではなくシーラの、そしてシズクではなくティアナの。時にぶつかり合い、時に受け止めて。見せられるのは四人の、バケモノへと変わりつつある人間たちの切なる願い。しかし、カルテシウスのトップ、ベイルは軍勢を率い、アンロウを抹殺しようとしている。
「悪いけど、この名前は俺が貰うよ」
「俺は、俺の勝手にさせてもらう」
その中、ノーマンが選んだのは。もはや「ノーマン」という「彼」はいない。大事にしたもの、信じたもの、愛したものもすべてを犠牲にする道。己自身という空虚なバケモノが今、目を覚ます。バケモノを愛したバケモノは、軍勢に突入して暴れまわって組織を壊滅させて。スフィアの計らいにより、アンロウを管理する立場になって。
「俺が、みんなを守るよ」
最初は嘘から始まった、だけど本当にするという誓い。これより始まっていくのが、彼らの関係なのだ。
彼らだけのビギンズナイト、すべての始まりを紐解く今巻。最後まで皆様もぜひ。