読書感想:ミドルノートにさよなら

 

 さて、昨今、大学やら高校などの女子校、男子校など所謂生徒の性別を限定する学び舎は統合されたり共学化されたり、と言う事が多いらしいのだが、やはりそれは少子高齢化、というものの影響かもしれない。それはともかく、女子校と聞くとミッション系、端的に言うとキリスト教系の学校なイメージがあるのは自分だけだろうか。ミッション系、な学校とはそも、どんなことを学んでいるのだろうか?

 

 

そういった世界、というのは中々見たことがない事が多いかもしれない。実際私も、ラノベやら漫画の中でしか見たことがない。この作品はそんな、ミッション系の学校の中で巻き起こるお話であり。二人だけの世界を創っていた百合、な思いが歪んでいく物語なのだ。

 

神奈川県にあるプロテスタント系の女子校、清葉女学院。二年生である、何処か男的な冷たさを持つお嬢様の彩音(表紙右)と、どこか意固地でのんびりとした真白(表紙左)。真白のメンター的存在であった生徒会長、稲穂に少し心配されたりしつつ、二人の関係は盤石。時にベッドの中で触れ合ったり、時に二人でストリートミュージシャンとして活動したり。思い合う二人の世界に、二人以外は入り込む余地はなく。

 

「桜庭真白さんは遠からず、生物学的な男性になるんですよ」

 

しかし真白は最近、謎の痛みと生理が来ない事に悩まされていた。それはある日、襲い来る。真白を襲ったのは、「突発性性転換現象」と呼ばれる現象。文字通りの現象、遠からず性転換してしまうという事。

 

「桜庭真白は、あたしを信じてればいいんだよ」

 

病院から呼び出されそれを知った教師、聖良に彩音は真白が衝撃を受け止められるまで誰にも秘密にしてほしいと頼み込んで。真白の事を救って守って。彼女の事を守ろうとする。

 

しかしそれは、見方によっては自分の元に縛り付けようとするようなもの。不器用に救いの手を伸ばそうとする稲穂の手を払いのけ、彼女の事だけを守ろうと。それでは駄目だ、と真白は聖良の手を借り彩音を自分の元から遠ざけた後、クラスに自分の事情を告白し。クラスからの理解は得られるも、彩音との関係は拗れてしまいひびが入ってしまう。

 

思いをぶつけ合い、一応は溝を乗り越えて。クリスマスイヴの公演、その大トリを任せられることになる中で。 真白たちを襲うのは世間の一部の、拒絶反応。ある意味仕方のない、と言えなくもないのか。元は女性であったとしても、女子校に男子がいる、という事になりつつあるのはその通りであるのだから。

 

「そしてここからは、あんたも真白も知らない話」

 

ならば、下手人は救えるのか。その心を救えるのか。稲穂が犯人と見込んだ相手に突き付けたのは、言いがかり的推理。犯人はそれを認め、己の真実を明かし。

 

その行いの根底、それはぐちゃぐちゃな心のせい。まだ救いのないまま迎えるのは本番。救うのは主か、それとも聖女か。否、主は救うとは言うけれど、救えないものだってある。聖女なんていやしない。そこにいるのは未熟な信徒でしかない。

 

「私と、友達になってくれない?」

 

「僕でよければ、喜んで」

 

そう、救えるのはお互いだけ。神様なんていやしない、神様なんていらない。例え世界中が認めても自分だけは認めない、その否定こそが救い。歪む思いの先、新たな関係の形を見つけて。

 

「形が必要なら、いくらだって差し出すよ」

 

 

その先、ミドルノート、残り香を越えて。ラストノートの先に綴っていくのは二人の新たなプロローグ、となる訳である。

 

鮮烈でぐちゃぐちゃな巨大感情が交錯するこの作品、言い知れぬ重さを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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