読書感想:死なない少女の屍体は、ここに。

 

 

 さて、不死身と言うのは大体において、ラノベにおいては敵側のキャラクター、が持っているイメージが強い能力であるかもしれない。そんな敵と相対した時、何が見所となるか、というと不死身の攻略方法であろう。不死身、というのには大体の場合何かしらのからくりがある訳であり。そこを解き明かして突けば、不死身と言うのは攻略できるものである事が大半なのだから。

 

 

ではこの作品において不死身、というのは誰か、というと。表紙の人物、騎士たちの憧れの的であるテッサ(表紙)なのだ。不死身であり如何なる戦場からも生き延びる彼女。その彼女が殺された、他殺現場から物語は始まるのだ。

 

喪失すると世界から秩序が失われる、と言われる「律の樹」と呼ばれる大樹を守る、おおむね十四歳から二十七歳までの女性のみで構成される「界律騎士団」。現在の団員は、資格を持つ者が減り、戦死者や引退者の欠員を埋められず十一人。その騎士団へ今回、補欠ながらも合格したのがこの作品の主人公、レミナ。明るく前向きな元気娘。先に入団していた幼馴染、カリルと再会を喜び合い、カリルの事を好いている副団長、タミィとちょっと火花を散らしたりして。

 

「傷はつけられても、こんなことまでできないはずなんだ」

 

だが、式典の場に現れぬカリルを探し辿り着いたのは、団長室。団長であるテッサが斬首されて殺されている現場。そこにあったのは、レミナの両親を殺した、カリルとレミナ、二人の共通の幼馴染、エイレンの正体と思しき、「赤水晶」のマーク。騎士団を殺す者の関与、過去の事件がまた動き出す。

 

「手伝うくらいなら目をつぶる」

 

タミィと、カリル好きと言う一点で共感し取り付けた捜査助力の許可。調べ始め、まず知るのはテッサが「赤水晶」の事を調べていた、という話。図書館を根城とする騎士、シルにも手伝ってもらい知るのは、「赤水晶」の話。現れた時は必ず単独、というよく分からぬ何者か。調べていく中で同時に知るのはテッサの人柄。その中で触れられるのは、シマリクという名。それはテッサの相棒、死した筈、だが死した後にテッサが何度も目撃した、と言い出した人物。

 

「こっちが先なんだよ」

 

何がどうなっているのか、確かなのは一つ、騎士団の中に犯人がいる。外敵の脅威迫る中、再び起きる襲撃事件と放火事件。その最中、明かされていくのはエイレンの真実。レミナの推測が明かすのは、テッサの死の真実。

 

「全部繋がっているんだ」

 

そう、総ては繋がっている。全ての点を繋ぎ、導き出すのは身近にいた犯人、その正体。その本当の狙いはレミナ。カリルと共に襲われるも、レミナの異能力が力を示し。何故か犯人は、誰も殺す事が出来ず。

 

「みんなが命を落とさなかった理由ね・・・・・・」

 

そして最後、テッサの日記から明かされたのは、犯人が命を奪えなかった理由。それはテッサが最後に優先したもの。騎士としてではなく個人として、貫いたからこそ。

 

一連の捜査の中で皆の思いが様々にめぐる、どこか切ないこの作品。ちょっと切ないお話を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 死なない少女の屍体は、ここに。 (電撃文庫) : 築地 俊彦, 切符: 本