読書感想:読心探偵・大葉香夏子は頭がわるい ~心が読めるから真犯人特定までは余裕ですけど証明方法が全然わかりません~

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は、「探偵」というのは何を以て「探偵」と呼ぶと思われるだろうか。何をすれば「探偵」という認識になるのであろうか。その答えとしてはやはり、「謎解き」、推理であろうか。現場を見て、遺された痕跡から犯行方法や凶器を解き明かし、そして最後は犯人に真実を突き付ける。その行動を持ってこそ「探偵」は探偵として、ミステリの主人公と言う事になるのではないだろうか。

 

 

ではこの作品の主人公、香夏子(表紙左端)は探偵と呼んでいいのか。煽り文句でも探偵と呼んでいいのか、と呼ばれている彼女は掟破りの探偵、である。彼女がその身に身に着けているのは「読心能力」。聞きたいと思った者の心の声を聴く力を持っているのだ。

 

(証拠がないのよ! 証拠がっ!)

 

 

・・・・・・が。彼女には致命的な、というか致命的に過ぎる欠点があった。それは探偵と言うある意味様々な知識を求められるのに、本人は馬鹿に過ぎるという事。小中共に常に学年最下位、月極駐車場を月極さんの経営している駐車場と勘違いしサンタクロースも信じ込んでいて、高校入学が奇跡と呼ばれる程。そんな彼女は何故読心能力を持ってしまったのか。それは生キャラメルにつられて誘拐されマッドサイエンティストに改造された、というまぁ驚きの理由で。 それで読心能力を身に着けて、どうなるのか。心の声が分かるから、真実までは最短でたどり着く。だが証拠が分からない。つまり、証明の答えは分かるけれど証明式が出せない、ようなもの。

 

しかし、最初はこの力で大儲け、と思って始めた探偵業は最早逃げる事敵わず。香夏子はどう推理するのか。それは頭の中で乏しい知識を使って推理、周りにヒントを示し真実を解かせる、といった綱渡りの方法。

 

そんな綱渡りで、共に実験され怪力を得た助手にして親友の暦(表紙右端)、自分の欲求に忠実で善悪の価値観が警察らしくない警視正、直美(表紙中央)、香夏子を名探偵と勘違いしている通称「ゴリ警部」、理人(表紙中央奥)と共に挑んでいくのは数々の事件。 しかし、サトウとシオ先生の作風をご存じの方であればご存じだろう。絶対に、ドタバタになると言う事を。

 

資産家の妻が襲われた事件に挑めば、証明方法が分からずに冷や汗をかき。直美に持ち込まれた遺言書喪失事件に挑むも、犯人の心の声が独特の方言過ぎて聞き取れず。更には病院で偶々居合わせた医師昏倒事件に挑めば、犯人がミラクルを起こし過ぎて自白まで辿り着けず。

 

「謎、解けたかも」

 

だがその中、犯人に関わりのある者の服毒自殺、更には警察の人間の手助けによる犯人の逃走、などの事態が次々と発生、更には直美が謹慎処分を受けてしまい。彼女に託されていたお酒のケースから出てきたのは、かつて自分達が巻き込まれた事件を直美がまだ調べていた、という事。 その資料から、香夏子のおバカな頭が故に導き出した推理は、それこそ荒唐無稽、だが辻褄の合うもの。

 

「やったりますか! いつものヤツを!」

 

解き明かせたのならばやるべきことは只一つ、探偵らしく。

 

「そうよ、そんなバカなのよ私は! ついでに言うと家族想いの妹バカよ私は」

 

暴き出したのは身近な人の中に、黒幕がいたと言う事。 黒幕との対決、窮地を切り開くのは香夏子のおバカな故の、真っ直ぐな力。 そしていつもの日常に戻っていくのだ。

 

推理コメディと言う名の通り、笑えるドタバタな推理が笑いを齎してくれるこの作品。笑える作品を読みたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 読心探偵・大葉香夏子は頭がわるい~心が読めるから真犯人特定までは余裕ですけど証明方法が全然わかりません~ (GA文庫) : サトウとシオ, 日下氏: 本