読書感想:スクール=パラベラム 最強の傭兵クハラは如何にして学園一の劣等生を謳歌するようになったか

 

 さて、突然ではあるが。学校、例えば高校において爆発音が響いたりしたら事件か事故のどちらかを伺うべきであるし、銃撃音が響いたらまず事件である。仮に銃撃音が響いたら治安が悪い、なんてものじゃない。しかし、かつてラノベの時代にはそんな時代もあった、というのを画面の前の読者の皆様はご存じであろうか。例えば某フルメタル・パニック!のように。学校で普通に銃撃戦やってたり、巨大ロボット同士が戦っていたり、人外やら異能バトルの舞台になっていた時代もあったのである。

 

 

そう考えると、昨今のラノベの舞台となる学校は大分平和になった、と言えるのかもしれぬ。しかしこの作品では、そんな少し懐かしい空気に溢れている。銃弾と爆風が付属している青春が繰り広げられるのである。

 

その中心となるのは少年、京四郎(表紙上)。元SEALS隊員の父を持つ日系アメリカ人であり、父が役員を務めるPMCに十五歳で入社し、社内で幾つもの輝かしい経歴を残しながら、世界各地でドンパチ繰り広げていた少年。

 

「まさしく俺のためにあるような学校じゃないか」

 

しかし、彼は休みが欲しかった。鉄火場から離れバカンスしたかった。そんな彼に示されたのは、ありとあらゆる才能の持ち主が集められる、五つの学部に分かれた「私立五才星学園」への入学のお知らせ。青春の気配に心踊らせるも、結局それは利権と派閥の陰謀渦巻く伏魔殿への潜入任務でしかなく。損害を経費で補填するという事を盾にされ、結局任務に挑まねばならなくなる。

 

唯一友だちになってくれた風香(表紙左)とわちゃわちゃしたり。その友人である天才アーティスト、紗衣(表紙中央)に睨まれたりしながら。学園一の劣等生として、教授たちに説教されたりキレられたりしつつ。のんびりと自由に、昼行燈の様に青春を楽しんでいく。

 

だが、この学園の闇はすぐに牙を剥く。そして闘争である以上、京四郎は無関係ではいられない。紗衣の作品を狙う、対立する学部からの刺客と仕掛けられる爆弾。

 

 

「それが労力に対する十分な報酬というものだ」

 

「悪い人も、怖いものも、全部きょうちゃんがやっつけてくれる」

 

 

 求められる助け。彼のやるべきことは何か? それは必殺の銀の弾丸、となる事ではなく。何処にでもある弱き者の為の弾丸となる事。 そこにぶっ飛ばすべき悪がいる。ならば迷う事はない。 ・・・・・・仕事の時間だ、ロックに決めるとしようじゃないか?

 

 

時に潜入、時に裏切り。そして時に、カーチェイスからの銃撃戦。まるで洋画のような派手な鉄火場の中を駆け抜けていく。雷雨を巻き起こさんかというように、嵐を呼ぶぜと言わんばかりに。

 

 

そんな、銃と硝煙に彩られた、男子の好きがこれでもかと詰め込まれたこの作品。心をワクワクさせたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: スクール=パラベラム: 最強の傭兵クハラは如何にして学園一の劣等生を謳歌するようになったか (ガガガ文庫 ガみ 14-4) : 水田 陽, 黒井 ススム: 本