読書感想:ノベルライト 文系女子、ときどき絶叫女子。

 

 さて、別に青春とは子供だけのものではなく、大人の青春が描かれるラノベも、数は少ないかもしれないが存在はしている。そんな遅れてきた青春はさておき、青春とはやはり高校生を題材として描かれる事の方が多いであろう。では青春とは何なのか。その答えは限りなく、様々に存在している筈なので、明確な答えはないだろう。部活動に打ち込むもよし、ラブコメに励むもよし、何気ない日常に耽溺するのだって良い。青春を描いたラノベの数だけ、青春というのは存在している筈なのだ。

 

 

そんな青春の一つのパターンとして、正反対な二人が出会って、共に同じ目標へ向けて頑張る、というパターンもあるだろう。それまで何の関係もなかった二人が出会って、少しずつ仲良くなっていく。それもまた青春であり、この作品にあるのもそんな青春なのである。

 

「私にはガガガがあるから大丈夫だし」

 

「あなた、ガガガ好きなの?」

 

かつてアイドルを目指していた事もあったけれど、夢折れた事ですっかりやさぐれて。今はガガガ文庫箱推しの拗らせぼっち、青春(表紙左)。いつもの時間、河原で一度叫んだあとの読書の時間。そんな時間に声をかけてきた同級生、京子(表紙右)。ガガガが好きなのか、と問いかけてくる彼女に自分と同好の士の気配を感じ取り。だが程なくして京子が好きなのは、ガガガSPというパンクロックのバンド、つまりはガガガ違いであると言う事が判明し。そこで二人の話はおしまい、となる筈だった。

 

「じゃあ、コラボ成立ということでいいよね」

 

しかし、学校で京子はいきなり話しかけて来て、この学校に何故かない軽音部を作りたいんだという夢を明かし。河原での一件を弱みとして握られ、ラノベ部設立と言う甘言に釣られて。青春は気が付けば、京子に協力する事となる。

 

反りが合わぬようで、意外と合うのか。お互いの好きな事を経験してみると言う事で、まずは京子のライブハウス訪問に付き合い、青春が今度はコミケに誘ったら、海上にいたコスプレイヤー系後輩、和馬が仲間に加わる事となり。更に青春がこっそり書いているweb小説に批判をしてきたユーザーを探す事となったら、サキュバス系先輩の明日香にぶちあたり。気が付けば軽音部設立の条件は整う。

 

が、しかし。部活動担当である長田先生の謎の難癖に部活動設立が阻まれてしまい。理由を探った所、どうも長田先生はこの学校に前に存在した軽音部の関係者であり、かつてメジャーデビューもした事がある、という過去を知り。そこの情熱に火をつけようと画策していた所で、条件を付けられる。それは、来月の文化祭で軽音部はライブで百人、ラノベ部は自作ラノベを百冊売れ、というもの。条件があれば燃えるもの。早速軽音部の方は練習に励もうとする中、京子がボーカル出来ないという事でボーカルがいない、という問題が持ち上がる。

 

「じゃあボーカルは青春に決定!」

 

その問題の解決策として白羽の矢が立つのは、何を隠そう青春。かつてアイドルを目指していた時の経験、河原で叫んでいた経験が今、ぴったりの力となって。欠けていたピースが埋まって、いよいよ文化祭へ向けて、転がるように駆け出していく。

 

皆で音を合わせて、好きを語り合って。時に線香花火を囲んでみたりして。

 

「私が青春だ―――!」

 

 

そう、気が付けばいつの間にか。大嫌いだったはずの青春が目の前にあった。真っただ中にいた。気が付かなった、見もしなかったもの。だけど怖がる必要なんてなかった。青春に四角は何もいらない。輝かせてあげる、という仲間達が背中を支えてくれる。いつの間にか始まっていて、いつもすぐそばにいて、いつまでも終わらない。全てが青春、そう気付いた時に。好きになれた「青春」、彼女だけの「青春」が音となるのである。

 

その先に、願いが叶う未来がある。かつてそこにあった青春の熱を継いで、今を生きる子供達の青春が幕を開けるのだ。

 

君と今、弾んで進む、アオハル道。まさにI call you rock  青春は、君無くしては始まらない。正にはじけるように、青くて熱い青春を、ガガガと駆け抜けていくこの作品。 迸るような青春を見てみたい方は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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