読書感想:ソフィア、君は死んでいないのか? ~魔法研究を引退した俺は、北欧王女の婚約者と学園生活を楽しむ……はずだった~

 

さて、時に画面の前の読者の皆様は、ミステリーにおいて死亡を偽装する方法とはどんなものがあるかご存じだろうか。偽装したい人に背格好の似た死体を用意、その人の服を着せた上で顔を潰すという方法があったり、何人かの死体をバラバラにしその場にばら撒く事で、沢山の人が死んだと言う事実を突き付けその中で死んだ数を誤認させる、という方法もある。 死んでいないのか? という死を偽装する方法には色々あるのである。

 

 

さて、ではタイトルにもある通り、北欧にあるフィンランド王国の第四王女、ソフィア(表紙右)は死んでしまったのか? それはこれから触れていきたい。と、その前にこの作品の世界観を簡単に記すが。世界観に関する詳しい説明は本編ではされぬので、分かっている所を繋ぎ合わせると。この世界、どうも現代の地球によく似ているけれど魔力というのが当たり前に存在しているらしい。

 

魔法が使われた世界大戦終結から数十年が経った記念の年、それが日本の名家で「神童」と呼ばれる少年、陽太(表紙左)とソフィアの二度目の出会い。彼女の悪戯で長い距離を歩かされ、翌年の三度めの出会いで甘いチョコを食わされたり。そんな折、七歳になった時。第二の魔法と呼ばれる空間制御系の魔法が誰にでも扱えるようになった年。ソフィアの悪戯で陽太の論文が世界に公開され、認められて。九歳の頃から三年間、二人は分断を乗り越えられなかったドイツの西側にある研究所で働き。

 

「これからは、君の魔法を私のために使って」

 

三年後、知らされたのは二人が婚約者同士である事。日本とフィンランドに離れ三年つかず離れずの距離。十五歳、ソフィアの提案で魔法研究を互いに卒業し、魔法士と呼ばれる戦える者を育成する学園都市で、青春をしてみることに。だがそこで事件が巻き起こる。先に待っていた陽太の元、飛び込んできたのはソフィアの乗る船が海難事故にあったという事。確認した、彼女のきれいすぎる死体。

 

「遅くなっちゃった」

 

だがしかし、何故か彼女は二人暮らしするはずの自分の家にいた。どういう事か? 混乱の中生活用品を買いに出たら判明するのは、どうもソフィアはこの学園都市の外には出られぬというもの。何故か? それは学園都市を囲む結界に弾かれるから。 何故? 鍵を握るのは身体データ。先に生徒になっていたソフィアの双子の妹、リサ(表紙左下)の持つデータと照らし合わせて判明したのは、陽太の目の前にいるソフィアは身体データ的には本物であると言う事。ならば学園都市側のデータが改ざんされたのか。いつの間にか取られていたそのデータを探る為、今は学生生活へ。

 

入学した学園、そこは弱肉強食の、「権利」を求め奪い合う世界。ソフィアは入学試験の結果、主席として。陽太は最下位として。出会っていくのは個性的な仲間達。そこで見ていくのは、「権利」を巡るそれぞれの思い。

 

その中で判明していくのは、ソフィアを襲った海難事故の真実。それは爆弾を抱え込むようなもの。だから離れようと、ソフィアは「退学の権利」を勝ち取り。それを引き留める為、陽太は戦いを挑む。

 

「だから、俺はソフィアの全部が好きだ」

 

自身より圧倒的に強い彼女を打ち倒すのは何か。それは詠唱に込めた思い。思い込めて叩き込むは、いつの間にか用意していた無限の弾丸。その先に、新たな広大な世界は広がっているのだ。

 

広大な世界観の中、周りを巻き込んでいちゃいちゃしている二人の甘さが堪らないこの作品。ファンタジーでラブな作品を見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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