読書感想:金属スライムを倒しまくった俺が【黒鋼の王】と呼ばれるまで ~家の庭で極小ダンジョンを見つけました~

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。ダンジョンが現実世界に出現する、という作品は時折見かけるものの、そういった作品においてこういった事を感じたことはないだろうか。結局のところ、現実世界にダンジョンがあっても、特にこの世界は変わらないのかも、という事を。それもまぁそうかもしれない。例えば新型コロナのような世界を揺るがすような大きなイベントも、数年が過ぎてしまえば世界に根付くものである。となれば。ダンジョンが出現して世界が崩壊したりしなければ、案外世界は変わらないのかもしれない、と。

 

 

この作品における世界も、そんな感じである。突如世界の各地にダンジョンが出現し早七年。人工のダンジョンを創る技術も確立され、一大産業としてダンジョンは生活に根付くも。結局のところ、その恩恵に与れるのは一部の人間ばかりであり、ごく普通の一般人までは中々チャンスが巡ってこなかった。

 

「悠真は将来のこととか考えてるの?」

 

そういった大勢の方、平凡な高校生である悠真(表紙左)。ダンジョンを探索する「探索者」を目指す幼馴染の楓(表紙右)、将来の事をきちんと考えているもう一人の幼馴染、ルイとは違い特に目標も夢もない彼。退屈なある日、彼の家の庭に物凄く小さなダンジョンが発生し。その中には普通のスライムとは違う、金属質な身体を持ったスライムがいたのである。

 

一先ず倒すしかなく、家にあった様々な道具を利用し温度変化という特性を生かして何とか討伐するも、しかし何度もスライムは出現し。げんなりしながらも何度も何度も倒していく中、ドロップしたのは「魔鉱石」と呼ばれる売り物にもならない石。

 

その利用方法を調べてみたら、「マナ」というものが重要らしいと判明し。しかし調べてみた所、彼にマナはなく。正に徒労、である筈だった。だけど彼は知らない。知らぬ所で実は、とんでもない事になっている事を。

 

そも、どうも彼のマナは規格外、それこそ測定器が壊れるほどに。そんな力を持っている彼が魔鉱石を取り込んでみたら、どうなるか。それこそとんでもない事になるのである。

 

更にスライムを倒し続ける事で、色違いのスライムも出現するようになり、挙句の果てには最後に巨大な金属スライムまで出現し。魔鉱石を取り込んでいく事で、人外の姿に変化する力を得ていく彼はどんどんと、人間の範囲から逸脱していく。

 

「すぐに終わらせる!」

 

探索者を育成する学園に入学し、楓に追いつくことを目指し頑張る中、授業の中で深層の魔物というとんでもない敵に遭遇するも、圧倒的なその力で片付けて。だけど彼は得られるものはない。押し付けられた不運とでも言わんばかりに、その力を明かすことは出来ず結局何も得られない。

 

しかし世界の裏、為政者たちからは謎の存在として注目を集めていく。いつの間にか、世界から注目されていくのである。

 

報われるまでが長そうな道のりの中、無双しながらもがくこの作品。ちょっと捻った爽快感を読みたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

金属スライムを倒しまくった俺が【黒鋼の王】と呼ばれるまで ~家の庭で極小ダンジョンを見つけました~ (ファンタジア文庫) | 温泉 カピバラ, 山椒魚 |本 | 通販 | Amazon