読書感想:ねこぐらし。 猫耳少女はお世話をしたい

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。ぬこ、もとい猫という動物は可愛いものである。犬派の読者様がおられたら申し訳ない、どうかその振り上げた拳を降ろしていただきたい。

 

 

この通り、我が実家の飼い猫はこんなにも可愛いので。という話はともかく、この作品は猫の要素を持つ娘達がヒロインなのである。では一体どういう話なのか。この作品は癒しを題材としたラブコメなのである。

 

 

「うん。今にも倒れちゃいそうだよぉ? だから、ここで休んでいって?」

 

日々受験勉強とバイトに勤しむ少年、優斗。彼はある日、気が付いた時には自然の匂いがする濃い靄の中にいた。無論こんな場所に来た前後の記憶がない中、鈴の音と共に現れたのはシャム猫(表紙)と名乗る女性。その背後に現れた大きな旅館、「猫鳴館」。一先ず行く当てもない彼は、シャム猫に誘われここに逗留する事となる。

 

「でもここでは、もう頑張らなくていいんだよ?」

 

帰らなくては、と思うけれど、そもシャム猫は東京の事も知らず。猫鳴館や温泉街を駆け回ってみても脱出の糸口すらなく。改めてシャム猫に受け止められ、頑張りを認められ。改めてこの宿でお世話になる事を決めた優斗は、シャム猫に甘やかされていく。

 

お風呂で背中を流されたり、膝枕をされたり。足湯に共に浸かったり。彼女の案内で猫鳴館の庭園を見て回ったり、温泉街に二人で出かけてここでしか出来ない体験をしてみたり。

 

「そんな心配しなくていい。だって、私は君から逃げないもん」

 

シャム猫だけではなく、他の従業員もいる。礼儀正しいミケ猫に旅館を案内してもらったり、妹系なシロ猫と卓球対決に興じたり。今まで追われていたものから解放され、ついでに記憶の一部からも解放され。自分というものの一部が分からなくなる中、シャム猫は人と関わろうとしない優斗と約束をし、ずっと一緒に居ると言う。

 

「またこうやって、キミと楽しく過ごせるなんて・・・・・・」

 

雨宿りの最中、彼女が不意に漏らした一言。無論、優斗にシャム猫のような知り合いはいない、筈。ではどういう意味なのか。それを聞く間もなく、シャム猫は風邪をひいてしまい。今までのお礼も兼ねて、優斗はシャム猫の看病に立候補する。

 

「だから今日くらい、俺に甘えてくれ」

 

頑張ってきた彼女にご褒美を。今度は彼からの甘やかしを。甘やかしが甘やかしを招き、更に甘くなって。気が付けば、まるでとーんと、おっこちきるかのように。二人は惹かれ合っていくのだ。

 

だけど彼は未だ知らない。この「猫鳴館」という舞台が、正に彼の為に設えられた舞台のようなものであるという事を。シャム猫も、ミケ猫も、シロ猫も。実は三人共に過去に出会っているという事を。

 

甘やかしと優しさが心に沁みる、心が癒されるこの作品。甘やかされたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

ねこぐらし。 猫耳少女はお世話をしたい (ファンタジア文庫) | 浅岡 旭, ぶーた, CANDY VOICE |本 | 通販 | Amazon