読書感想:スキルが見えた二度目の人生が超余裕、初恋の人と楽しく過ごしています

 

 さて、突然に当然ではあるが我々が生きるこの世界にスキルのようなものもないし、魔法のようなものもない。だからこそ本当の現実世界と言う舞台においては異能力バトルなんて存在しないし、ラブコメはあっても、バトル要素は喧嘩くらいしか存在していない。ではもしそんな世界が急に変貌を遂げるとしたら、皆様は一体どうされるであろうか。果たして皆様は生き延びる事は出来るであろうか。

 

 

人生のすべてがそれなりに優秀、努力が出来た代わりにスペックが足りていない。主体性のないままにブラック企業に就職し、日々仕事に忙殺されていた青年、靖(表紙左)。彼はある日、過労で倒れ唐突な死を迎え。死神がお迎えに来る寸前、何者かも分からぬ謎の声に話しかけられ。様々な後悔を吐露し、謎の声の誘いに乗り。「来るべき日」に備える、という目的だけを与えられ、人生の時計を逆行させていた。

 

 目を覚ましたその時は、中学校の入学式。しかし二度目の人生はちょっとおかしな事になっていた。何故ならば靖の目にだけ、まさしく「ステータス」と言うしかない表示が全てのものに対して見えていたのである。

 

「もっともっと、頑張ろう!」

 

一先ず夢ではない、しかし何をすればいいのかイマイチ分からない。とりあえず身体を鍛える事を考え、日々筋トレに励み。だがその代わりに周囲とのコミュニケーションをおざなりにしてしまった事で、タイムリープして一年がたつ頃には筋力や魔力等のステータスは身に着けれど、社交性は身に着けられず。それどころか切れない「威圧」スキルを手に入れてしまった事で、孤立してしまっていた。

 

 しかしそんな彼にも友達ができる。その名はいちか(表紙右)。かつての人生で憧れた初恋の人。中二となり少しずつ交流を深め、ぎこちなくも心の距離が近づき。だがはじめてのデートの日、「来るべき日」は唐突に訪れる。何故か二人は転移としか思えぬ現象により謎の洞窟の中へと二人して放り込まれてしまったのだ。

 

魔物との容赦なき邂逅、何とか乗り切り迎えた初めてのレベルアップ。だがダンジョンからの脱出は出来ず。仕方なくダンジョン攻略に乗り出し、探索に秀でるスキルを持っていたいちかをレーダー代わりに靖が戦闘を行う形でダンジョンを突き進み、あっという間にボスである亜神竜と邂逅し。探索の中で急激に進化した力で難なく戦いを乗り切って。

 

 だが、それは大いなる始まりに過ぎず。ダンジョンを攻略した事で鳴り響く謎の音声。それが告げるのは全人類への鑑定スキルの付与、そして世界にダンジョンが出現すると言う事。今この時を以て、世界は大幅に塗り替えられ誰も知らぬ世界が始まってしまったのだ。

 

その扉を開いてしまった靖といちかは、放っておいてはもらえない。同姓同名の人物をしらみつぶしに当り彼等の元に辿り着いたのは、自衛隊の者達。彼等にダンジョン攻略の協力を要請され、報酬と引き換えに引き受け。二人は自衛隊の人達を鍛えながら、ダンジョン攻略に乗り出していく。

 

 もう一人ではない、訓練メニューに頭を悩ませ、足並みをそろえる事に苦労し。そんな彼の隣で何くれとなくサポートしてくれるいちかの秘密を、靖は知ることになる。

 

それは一周目から彼女が自分を愛してくれていたという事。彼女が彼を支える為に、人生二周目に挑んでいたという事。

 

「俺と・・・・・・付き合ってください」

 

なればこの結果は必然。「来るべき日」なんて関係ない。一緒にいたい、ただそれだけ。

 

まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのように、色々な面白さが詰め込まれて溢れ出すこの作品。年頃の感情と二周目だからこその考え方が根底にあり、そういう意味でも面白い、と言える。

 

やり直し系の作品が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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