闇堕ち。果たしてそれを聞いて、画面の前の読者の皆様は何を真っ先に連想されるであろうか。闇堕ちというと大体黒くなる、言動が悪役っぽくなる、行動が悪に染まるという結果を連想される読者の方も多いかもしれない。
では、そんな闇堕ちという行為は何を齎してしまうのか。私個人の私見からなる答えを言ってしまうと、そこにあるのは大なり小なり甚大な被害である。闇堕ちしたのならば力は高まるものである事が多いし、既に多大な力を持った者が闇堕ちしてしまったのならば、その力のままに甚大な被害を出してしまう。
だがしかし、闇堕ちというものには往々にして何かしらの原因があるものであり。その目的を何とかしてしまえば、防げるものであるのである。
霊衝と呼ばれる、強い魔力を備えた体質の素質こそが全てを決めるとある世界。その何処かにある帝国のパーティー会場は今、謎の爆弾の爆発により炎に包まれていた。
その場に居合わせ、大けがを負った近衛騎士でもある姉のトト、彼女が庇った皇帝の長女、シャルナ(表紙)を助け出した、近衛騎士の中でも魔法を使えぬ落ちこぼれである主人公、リオ。
何とか落ち着いたと思ったのも束の間、爆発による頭部への怪我でまるで子供のようになってしまったトトに翻弄される中。リオはシャルナが落とした本に書かれていた暗号を意図せずして解読した途端、本は意思を以てしゃべり始める。
未来を観測することが役割と語る、ヒストグリフと名乗った魔本は語る。このままではシャルナは霊衝が悪性転化し、「闇堕ち」と呼ばれる状態となり、「首切り姫」として未来まで悪名を馳せる大犯罪者となってしまう事を。
その未来を防がなくては、自分とトトは死んでしまう。音声で会話できるようになり、段々自分の扱いがぞんざいになってくるヒストグリフと丁々発止のやり取りを繰り広げながら、シャルナの闇堕ちの原因へと迫っていくリオ。
さて、ここまで読んでいただいた読者の皆様であれば何となくお察しかもしれないがこの作品は、ファンタジーでもありバトルでもあり、闇堕ちの原因を探るミステリーでもある。だが、この作品における謎は闇堕ちへの原因だけではない。この世界そのものにも、謎が入っているのである。
滅んだと言われている、高度に発達していた先史文明。そこより出でた魔法、それは一体何なのか。世界を滅ぼした四人、その正体とは一体何なのか。
その全てが明かされる時、全てがひっくり返されるかのような衝撃を味わえるかもしれない。多くは語れぬ、何せ謎こそが密接にかかわるから。その部分を是非、読んでみてほしい。
「お任せします、ご武運を」
「ああ」
その重苦しい真実が隠された舞台の中、自身に出来る戦い方で必死に戦うリオの姿に胸を打たれるかもしれない。
重めでちょっと軽めなファンタジーが好きな読者の皆様、泥臭くも戦う主人公が好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
闇堕ちヒロインを幸せにする計画 ~魔本使いの少年と予言《首切り姫の絶望》否定~ (ファンタジア文庫) | 上川 景, マニャ子 |本 | 通販 | Amazon