さて突然ではあるが画面の前の読者の皆様、今社会の荒波にもまれているという社会人な方は是非手を挙げていただきたい。同じ悩みを抱えている方は結構いると思われるので。
さて、この作品の主人公である松友裕二は社会人である。そして最低な企業で最低な上司にいびられながら働く社畜である。そんな彼がお隣さんである二十八歳の社会人、早乙女ミオ(表紙)のちょっとしたトラブルを解決する事からこの作品は始まる。
この彼女、この年で手取り50万の給料をもらっている社会人である。そして割と重めの人間不信である。
何故人間不信なのかの理由は語ると長くなってしまうので、是非とも作品を読んで知っていただきたいが、注目すべきなのはこの手取り50万という部分である。
社会人ではない読者様に解説させていただくと、給料とは額面の条件通りに来るものではない。必ず何かしらの年金だの税金だのが勝手に差っ引かれるので、本当に重要なのは手取り、つまりは実際に支給される給料がいくらかという事なのである。そして手取り50万というのは、普通にこの年から考えるとよっぽどの大企業に勤め相応の成果を出していないとあり得ないのである。
そんな彼女が提案してきたのは、手取り30万での家政婦のお仕事。
そんなよく考えると妙な状況から始まる、契約関係に基づく二人の関係。
二人で料理をしたり、私生活はぽんこつなミオの本当の姿を知ったり。
二人でちょっと子供っぽいものを買い物に行ったり。
そう、この作品はラブコメディではあるがラブ未満である。しかし、お互いに傷ついた者同士が出会い寄り添い、お互いを埋め合っていく、しっとりとした大人の友情から始まる、ディープでむせるような大人の恋のお話なのである。
闇に満ちた大人の世界を知りたい読者様、何かを取り戻すかのように日々を積み重ねる恋の話を読みたい読者様は是非。きっと満足できるはずである。
追伸
これから就職されるという読者様、週休二日制というのはよくある条件だと思うが週休二日制と完全週休二日制、この違いには気を付けてもらいたい。二文字だけ違うように見えて意外と違うので。