前巻感想はこちら↓
読書感想:絶対魔剣の双戦舞曲2 ~暗殺貴族が奴隷令嬢を育成したら、魔術殺しの究極魔剣士に育ってしまったんだが~ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻までを読まれた読者様であればこの作品における敵役である国、スカラザルンが起こした一連の騒動の裏に蠢いている者、「大賢者」という存在についてもご存じであろう。仮面を被り、しかしジンの姉であるような影をにおわせるかの大賢者とは、一度決着を付けなければならないのは明白だ。そして決戦の第一幕、大切なものを取り戻すべく戦う事になるのが今巻なのである。
「ちょっとこれは、成長著しい、の一言で片づけてよいとは思えないんですけど?」
前巻の騒動後、ジンの指導の下で訓練に引き続き励むリネット達見習い魔剣士達。その中でリネットの魔力が増えてきたらしい、という結果が表れ始めるもジンはあまりいい顔をせず。それもまぁ仕方のない事かもしれない。何せリネットの抱えている事情が事情なので。
しかし、やはり敵は待ってはくれなかった。ミラベルが見つけた一枚の書類、そこに記されていたリネットの個人情報。それを探る間もなく、新たな一手が放たれる。友好国からの交易船に見せかけた船が、入港直後に突如として牙を剥き。皇都近くまで川を遡ってきたかと思うと、何と足を生やして上陸してきたのだ。
魔道砲撃により一方的に与えられる被害、途端に陥る大混乱。その中で皇宮にぶちこまれた砲弾に記されていたのは、ジンの姉であるミオの名。上陸してきた船に確認できたのは彼女と同じ特徴を持つ仮面の女性。
最早疑うまでもないだろう。これは誘われているという事を。どのみちその船を止めるには中に潜入するしかない。
「たとえ半人前だとしても」
一人で行こうとするジンに、一番弟子と二番弟子であるリネットとルーシャが食い下がり、結果として彼女達の成長を感じ、彼女達も連れていく事となり。三人で潜入した戦艦の中で見たのは、全員仮面を被った船員たちと、内部の壁の中を走る触手、というどう見ても不可解な船内。
その中で「大賢者」は姿を現し。ジンの姉であるミオの身体を使っていると語る彼女は語る。リネット、そしてジンの生まれに隠された秘密を。
「俺はあの日の俺のままじゃないし、お前もあの日の姉上ではない」
しかし、そんなものは今更どうでもいい。やるべきことは只一つ、ミオの奪還、そしてこの船を止める事。ミオの身体を操る大賢者との戦いの勝敗を分けるのは、立ち止まったものと進み続ける者の差。
そして、超巨大な船であっても恐れるに足らず。勇者の血統であるその技が、魔王を前にその力を発揮できぬ訳もないから。
一つの決着となり、全員に見せ場のある今巻。シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。