読書感想:荷物持ちの脳筋無双

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様は自分が携帯できる荷物の最大荷重はどれほどであろうか。私はMAX20キロくらいなら何とかできるが、これは多分例外なので参考にはならない。では皆様はどれくらいの荷重であれば、持ち運ぶことは出来るであろうか。そんなニッチな方向への質問はさておき。この作品においては「荷物」、より正確に言えば「荷物持ち」のスキルが重要となるのである。

 

 

魔物やダンジョンが存在する、とある異世界。かの世界のSランク冒険者パーティ「慧眼の黒獅子」に所属する「荷物持ち」の少年、リュック(表紙右)。しかし彼は何処までいっても「荷物持ち」であり戦闘においては役立たず。結果としていつの間にかパーティの面々から疎まれ。リーダーであるレオンの手により、お宝を手に入れた後に危険な土蜘蛛の住まうダンジョンへと追放されてしまう。

 

失意の中、帰る道を探す中で出会ったのは東方の装束を纏う少女、ミオ(表紙左)。彼女が持つスキルもかなり役立たずであった。その名も「御守り作り」。一人一つしか持てないが、しょぼい効果しか発揮できぬ御守りしか作れないスキル。

 

「君の御守りは最強だって俺が証明する」

 

・・・普通に考えれば、ゴミスキルしか持たぬ二人。だが、この二人はどうも運命的に出会った組み合わせであったらしい。「荷物持ち」のスキルを持つリュックは、御守りの一人一つという原則を唯一無視できる存在。つまりは容量の続く限り重ね掛けが可能。一つ一つは小さくとも、数百個単位で重ねる事で。リュックの実力はそれこそSランク冒険者並みに重ね掛けされていったのである。

 

ならば最早、彼等を阻める道理はなし。賊もぶっ飛ばしダンジョンを脱出し。しかし新たなパーティを組もうとしたら、実力不足を理由に却下され。方策を探る中、ある切っ掛けを気に戦闘狂な高ランク冒険者アリシアとその従者であるキューンに目を付けられ気に入られ。結成に必要な称号を得る為、彼等はアリシアの故郷で修行する事となる。

 

身に着けるべきは剣術、アリシアの故郷で妹であるクロエに絡まれたりしながらも。今まで得られなかった経験を倍速で取り戻すかのように、剣術を吸収していくリュック。

 

何処までも謙虚に、純粋に、そしてひたむきに。時には脳筋に。真っ直ぐに修行を重ねていく中、更にアリシアに気に入られ、クロエの心も解きほぐし。結果的に彼の人柄に惹かれ、周りには仲間達が集まりだす。

 

対し、レオンは一つ歯車が狂い、また狂いを繰り返し。リュックがパーティの実力を引き上げていたという事実を知らぬツケを払わされるかのように、クエストに失敗し。どんどん自暴自棄になり挙句の果てに傷害事件を起こした事で罪人となる。

 

ここで自分を見つめ直せるのなら救いは合ったかもしれない、だがそれはレオンは出来なかった。逆恨みの果て、二人は再び向かい合う。

 

「・・・・・・いい機会なのかもしれないね」

 

あの頃と同じような勝負、だが今度は立場は真逆。かつて憧れた幻像を振り払い。リュックは本当の意味で歩き出していくのだ。

 

少年漫画の主人公的な純真でひたむきな主人公だからこその面白さがあるこの作品。爽快感と熱さを楽しみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

荷物持ちの脳筋無双 (講談社ラノベ文庫) | ちると, こるり |本 | 通販 | Amazon